文化祭の脚本 昔話(桃太郎)
場面1 桃太郎誕生
ナレーター:むかしむかしあるところにおじいさんと(あわせて、右からおじいさん舞台に登場)おばあさんが(あわせて、左からおばあさんも登場)住んでいました。二人には子どもがいませんでしたが、仲良く暮らしていました。
おじいさん:今日もええ天気じゃ。
おばあさん:気持ちのいい朝ですねぇ。
(近所のおばさんたち話しながら右から登場)
おばあさん:おはようございます
おばさんA:おじいさん、おばあさん、おはようございます。
おばさんB:最近鬼が出るってうわさ、聞きました?
おばさんA:鬼って、見るからに悪そうな顔でしょ。きっと人間をさらって食べてしまうのよ。
おばさんB:山の向こうの村にも、鬼が来たそうよ。
おばさん全:(声をそろえて)こわいわよねぇ。
おばさんA:おじいさん、おばあさんも気をつけてくださいね。
(おばさんたち左へ退場)
おじいさん:鬼のことは心配じゃが、仕事をせんわけにもいかんし、そろそろ山へしばかりにいってくる。わしのいない間、気をつけておくれ。
おばあさん:はいはい、おじいさんこそ気をつけていってらっしゃい。おじいさんの好きなきび団子を作っておきますからね
おじいさん:では、行ってくるよ。
(おじいさん、右へ向かって退場。おばあさん、おじいさんを見送ってから左へ退場しようとする。突然、おじいさん右から登場。手に何かを持っている)
おじいさん:おーいおばあさんや、おばあさん。
おばあさん:なんですか、おじいさん。今日はずいぶんと早いですね。鬼がでましたか。
おじいさん:いやいや。じつはな、山へ行く途中、ピカーッと光る竹を見つけてな。切ってみると、ほれ、小さな赤ちゃんが
(といいながら、竹に入った赤ちゃんを見せる)
おばあさん:まぁ、かわいい赤ちゃんって、これはかぐや姫やん。この話は桃太郎やで。話がややこしくなるから、返してきなさい。
おじいさん:せっかく見つけてきたのにのう。でも、おばあさんが言うならしかたない。そっと返しに行くとするか。
(おじいさん、右へ退場 おじいさんを見送って、おばあさん退場しようとするとおじいさんと亀登場)
おじいさん:おーい、おばあさんや、おばあさん。
おばあさん:なんですか、また。
おじいさん:山へ行く途中、子どもたちにいじめられている亀を見つけてな。かわいそうに思って助けたらお礼に竜宮城へ連れて行ってくれるというんじゃよ。おばあさんも、一緒に行こう。
おばあさん:竜宮城か。どんなとこやろうって、それは浦島太郎やん。だいたいおじいさん、あんたは山に行くはずやろ。なんで海に行ってんねん。
おじいさん:いや、あの・・・
おばあさん:もうええ。おじいさんは家で留守番しといて。
亀:あのー、僕はどうしたら・・・
おばあさん:そやな、今から川へ洗濯に行くからそこまで案内したる。あとは自分で海へ帰るなり、うさぎと競争するなり、好きにしたら?
亀:はぁ
(おばあさん、足元にある洗濯物が入ったかごを持ち)
おばあさん:そしたら行くで。おじいさん、留守番しっかり頼むで。
(おばあさんと亀右へ退場。おじいさん左へ退場。おばあさん大きな桃を持って登場)
おばあさん:おーい、おじいさんや、おじいさん
(おじいさん登場)
おじいさん:なんじゃ、おばあさんや。(大きな桃を見て)どうしたんじゃ、その大きな桃は。
おばあさん:川で洗濯をしていたら、川上から大きな桃が流れてきての。おじいさんと一緒に食べようと思って、頑張って持ってきたんじゃ。
おじいさん:ちょうど腹もすいてきたところじゃ。さっそく食べるとしよう。
(といいながら、おじいさん、包丁を取り出す)
おじいさん:さて、とりあえず二つに切るか
(おじいさん、包丁で桃を切ると中から子どもが出てくる。おじいさんおばあさんおどろく)
桃太郎小:こんにちは、ぼく桃太郎です。
場面2 おばあさんがさらわれた
ナレーター:桃から生まれた桃太郎は、おじいさんとおばあさんに大切に育てられ元気でやさしい心を持った子どもに成長していきました。桃太郎が生まれてから10年後・・・
(おじいさんおばあさん、桃太郎左から登場)
おじいさん:どれ、いつものようにしばかりにでも行って・・
(おじいさんのセリフをさえぎるように)
桃太郎:おじいさん、今日から僕がしばかりに行きます。おじいさんは、おばあさんと家でゆっくりしててください。
おばあさん:おまえは本当にやさしい子だねぇ。おいしいきび団子が作ってあるから、帰ったらお食べ。
桃太郎:はい。では行ってきます。
(桃太郎右へ退場 鬼たち左から登場。おじいさんおばあさんおどろく)
おばあさん:私たちは見てのとおりの年寄りです。食べてもおいしくはありません。
鬼A:別に、お前たちを食べようと言うのではない。
鬼B:おれたちは薬を作る名人を探しておるのだ。
鬼A:このあたりにそういう人間がいると聞いた。
鬼B:薬をつくる名人はどこにいる。
おばあさん:私ですが何の御用ですか?
鬼B:お前か。おとなしく鬼が島へついて来い。
おばあさん:あ~れ~
(鬼たち、おばあさんを連れて行く。おじいさん助けようとするが鬼に振りほどかれて倒れる。そこへ桃太郎、しばかりから帰ってくる。)
桃太郎:おじいさん、どうしたんですか。
おじいさん:じつは、鬼たちが来て、無理やりおばあさんを連れて行ってしまったんじゃ。
桃太郎:えっ、それで、おばあさんはどこに?
おじいさん:たしか鬼が島に連れて行くといっておった。
桃太郎:よし、おじいさん、僕は鬼が島へおばあさんを助けに行ってきます。
おじいさん:たのんだぞ。途中で何が起きるかわからないからおばあさんが作ったお腹の薬と傷の薬とかぜの薬、それからきび団子を持っていくといい。(薬ときび団子を手渡す)
桃太郎:わかりました。では、行ってきます
場面3 仲間を増やして鬼が島へ
(意地悪じいさんと犬、右から登場)
意地悪じいさん:こら、はやく正直じいさんに教えたように、宝がどこにうまっているか教えろ。
(犬は無視)
意地悪じいさん:言いたくなければ、こうしてやる。
(意地悪じいさん腹を立てて、犬のしっぽを持って振り回す。)
犬:しっぽをはなせ、じじい。はなせ、じじい。はなせ、はなせ、はなさんかじじい。
ナレーター:この日からこのおじいさんは、はなさんかじじいと呼ばれるようになりました。
(桃太郎 左から登場。)
桃太郎:おじいさん、何をやっているんです?
意地悪じじい:この犬が、宝のありかを教えんのだ。
桃太郎:(少しだけ考えて)宝なら、向こうにありましたよ。
意地悪じじい:なに! それを早く言わんか。もうこんな犬には用はない。
(意地悪じいさん左へ退場)
桃太郎:(左を見ながら)うまくいった。(犬に)今のうちに逃げなさい。
犬:ありがとうございます。何かお礼をしたいのですが。
桃太郎:それなら、僕はおばあさんを助けに鬼が島に行く途中なんだ。一緒についてきてくれないか。
犬:鬼が島ですか。わかりました。ついていきましょう。
(桃太郎、犬、舞台右へ退場 舞台下を通って舞台左で待機しておく)
(かにたち左から登場)
子かに:おかあちゃん、お腹すいた。
母かに:家に帰ったら、この拾ったおにぎりを食べようね。
(さる右から登場)
さる:うまそうなおにぎりを持ってるな。
子かに:おじさんだぁれ?
さる:見たらわかるやろ、さるや。お腹がとてもすいてるねん。なぁなぁ、そのおにぎりとこの柿の種、交換しようぜ。
母かに:みんな、このサケのおにぎりが大好物なんです。
さる:でも、この柿の種をうまく育てると、柿の実がいっぱい食べられるで。
母かに:それはそうかもしれないけど・・・。
子かに:おかあちゃん、おやつに柿がたべたい。
母かに:わかりました。交換しましょう。
(交換してかにたちは右へ退場)
さる:さてと、久しぶりの食べ物だ。ゆっくりと味わって
(さるおにぎりを食べる)
さる:げっ。このおにぎりくさってるやないか(おにぎりを捨てて)いたたた、おなかが痛くなってきた。
(さる座り込む。そこへ桃太郎と犬、左から登場)
犬:どうしたんだい?
さる:実は、お腹が痛くて動けないんです。
桃太郎:よし、ではこのお腹の薬をあげよう。
さる:(薬を飲んで)復活!(あわせて復活の吹き出しを使う)何かお礼をしたいのですが。
桃太郎:それなら、僕はおばあさんを助けに鬼が島に行く途中なんだ。一緒についてきてくれないか。
さる:鬼が島ですか。わかりました。ついていきましょう。
(犬 舞台左を見ながら)
犬:向こうから誰か来ますよ。
桃太郎:おじいさんだ
(おじいさん左から登場)
おじいさん:やっと追いついた。
桃太郎:おじいさん、どうしたんです。
おじいさん:おばあさんのことが心配で心配で待っていられなくてのぉ。それで追いかけてきたんじゃ。
桃太郎:わかりました。では大切なおばあさんを、みんなで助けに行きましょう。
おじいさん:みんなでとはどういうことじゃ?
桃太郎:一緒に行く仲間を見つけたんです。ここにいる犬とさるです。
おじいさん:さすがじゃのう。ではみんなで行くとしよう。
(そこへきじが右からふらふらと登場。ばったりと倒れる。)
犬:どうしたんだい。
きじ:実はけがをして、痛くて動けないんです。
桃太郎:よし、ではこの傷の薬を塗ってあげよう。
きじ:(きじ、薬を塗ってもらい)復活!(あわせて復活の吹き出しを使う)何かお礼をしたいのですが。
桃太郎:それなら、僕はおばあさんを助けに鬼が島に行く途中なんだ。一緒についてきてくれないか。
きじ:鬼が島ですか。わかりました。ついていきましょう。
(全員右へ退場 舞台下を通って左へ)
場面4 鬼たちの本当の姿
(鬼A右から登場、舞台左の遠くを見るようにしたあと、右に向かって)
鬼A:親分。見かけないやつらがこっちに来ます。
(鬼ボス鬼B、右から登場)
鬼B:あのじいさんには見覚えがある。きっとばあさんを取り返しに来たんだ。
鬼ボス:なに、あの薬をつくるばあさんをか。なんとしても追い返すぞ。
鬼AB:へい!
(桃太郎たち左から登場。)
桃太郎:僕の名前は桃太郎。お前たちの親分はどこにいる。
鬼ボス:このわしだ。人間はこの島に来るなと言ってあるだろう。
桃太郎:僕の大切なおばあさんを助けにきた。
鬼A:まだ、返すわけには、いかないなぁ。
鬼B:お前たちこそおとなしく、さっさと帰ったらどうだ
さる:俺は帰ってもええで。
きじ:何言うてんの。こういうわくわくドキドキがええのやないの。
犬:こんなところまで来たんだから、このままでは帰れません。
桃太郎:さぁ、おばあさんを返せ。
鬼ボス:うるせぇ。お前たち、こいつらみんな追い返せ!
(しかし、鬼たちふらついてひざをつく。)
犬:どうしたんだ?そういえば、お前はやけに顔が赤いな?
鬼A:高い熱があるんだ。
さる:こっちは顔色が青いぞ。
鬼B:寒気がするんだ。
きじ:これはいったい、どういうこと?
(おばあさん右から登場)
おばあさん:桃太郎や、この鬼たちを許してやっておくれ。
桃太郎:おばあさん!無事だったんですね。
おばあさん:鬼たちは、私を食べようとして連れてきたんじゃないんだよ。それどころか鬼たちは、本当はやさしい心を持っているんだよ。
犬:やさしい? この鬼たちが?
おばあさん:この島には今、悪い風邪が流行っていてね。鬼たちは人間に風邪をうつさないようにこの島に来るなと言っていたんだよ。
きじ:だからといって、
(言葉をさえぎるように)
鬼B:ほかに方法がなかったんです。人間の町に行っておれたちが薬を買おうとしても、人間は誰も売ってくれない。
鬼A:鬼の中にはいい鬼もいれば悪い鬼もいる。なのに人間は、鬼はみんな悪いと見た目だけで決めつけてしまう。
鬼ボス:子どもたちに薬を飲まさないと、このままでは死んでしまう。それで仕方なく、薬を作ってくれる人間を連れてきたんだ。
おばあさん:鬼にとっても、子どもは大切な大切な宝なんだよ。この10年間、お前を育ててきたから、私には、その気持ちがよーくわかるんだよ。
桃太郎:おばあさんの言うこと、よくわかりました。ぼくは、おばあさんと一緒に家に帰れるなら、それだけで十分です。ここにかぜの薬がある。すぐにこれを飲むといい。
(鬼たちに薬を配る)
おばあさん:家にあった薬を持ってきてくれたんだね。この島には薬のもとになる薬草が少なくてね。鬼の子どもたちの分しかかぜ薬を作れなくて困ってたんだよ。
鬼たち:(鬼たち、薬を飲んで)復活!(あわせて復活の吹き出しを使う)ありがとうございました。
きじ:ほっとしたら、なんだかお腹がすきましたね。
犬:ぼくも、すごくお腹がすきました。
さる:おれ、ずっと腹へってたこと忘れてた
桃太郎:そうだ、ここにきび団子がある。これをみんなで分けて食べよう。
さる、犬、きじ:やったぁ
(桃太郎は鬼たちから順番にきび団子を配る)
おばあさん:これでもう大丈夫ですね。そろそろ私も家へ帰らせてもらいますが、かまいませんね。
鬼ボス:もちろんです。
おばあさん:もうひとつお願いがあります。
鬼ボス:おばあさんには、ほんとうに迷惑をかけた。宝物でも何でも持っていってください。
おばあさん:宝物などはいりません。
(鬼たちおどろく)
おばあさん:私がお願いしたいことは、時々ここへ遊びにきてもいいですか?ということです。
鬼A:この鬼が島へ、また来てくれるというんですか。
鬼B:おれたちは、こんなにも迷惑をかけたのに。
おばあさん:私がここに来れば、鬼のことを誤解している人たちも少しは減っていくでしょう。(鬼の子に向かって)もちろん、必要であれば薬も作りましょう。
おじいさん:えらい! それでこそわしのおばあさんじゃ。
(鬼たち、ひれ伏す)
鬼ボス:本当にありがとうございます。
桃太郎:それでは、そろそろ帰りましょう。(鬼たちに向って)ぼくもまた、遊びに来ます。
おわり
このクラスは、文化祭の舞台発表で何をするか考えた末に選んだのは人形劇です。等身大の板状の段ボール(鬼ボスだけは2倍サイズ)に絵を描いた紙人形を使った人形劇になりました。舞台で紙人形を操作する演者と2本のマイクの前で台本を見ながら声を出す声優にわかれて作品を発表しました。
普通の劇と違って衣装代は不要で道具類も少なくてすみました。場面に合わせて同じキャラクターでも違う絵を用意する、表と裏に別の絵を描いて場面進行に合わせて切り替える、何度か登場する「復活」のときには棒にくっつけた吹き出しを用意して人形の上に登場させるなど演劇とは違ったいくつかの応用もできました。
また、舞台に立つことを恥ずかしがる生徒も紙人形でほぼ隠れてしまうし、声優のセリフに合わせて上下左右に動かしたり傾け方を変化させたりするだけなので「演技」もそんなに難しくない。声優は台本を読むのでセリフを丸暗記する必要もない。結果として生徒の負担減にもなりました。
ただし、声優が使えるマイクは2本だけだったので、舞台にいくつものキャラクターが登場する場面ではセリフごとに右と左のマイクを使い分けることになります。すると、右のマイクを使った後いったん下がって次は左のマイクを使うようなこともありました。だから声優はどのタイミングでどこに移動するのかを細かく打ち合わせをして台本に書き込んでいました。