ちくしょう、高校行きてぇな
※今回の学級通信は、前回の児童養護施設での出来事の続きです。
卒業をお祝いするパーティーで
前回の学級通信で説明したことがあってから、僕はその児童養護施設に行く機会が減ってしまいました。それでも、次の年の3月に開かれたパーティーには参加しました。その年に中学校を卒業する3人をお祝いするためのパーティーだったからです。
集まったのはボランティアで関わった人たちを中心に、全部で15人ぐらいいたと思います。施設では鍋物を食べることがあまりないということだったので、メニューは寄せ鍋でした。また、買い物や料理を作るという経験もしたいということで、調理できるスペースがあって食器なども置いている部屋を借りて、パーティーは行われました。
まず、集まったメンバーで一緒に近くのスーパーへ行って買い物。3人の好き嫌いなどを確認しながら、いろんな具材を買いました。そして「鍋を3つも作るんだから全部同じにしないで違う鍋にしても良かったよなぁ。もう遅いけど。」なんて話もしながらすごく和やかな雰囲気で材料を切ったり盛り付けたりしていきました。
準備ができたら、さっそくパーティーを始めます。主賓である中学生の3人と僕だけは未成年だったのでお茶やジュースを、大人たちはビールや日本酒を飲みながら、食べたりおしゃべりを楽しんだり、時々大人たちの出し物もあって楽しい時間が過ぎていきました。
ちくしょう、高校行きてぇな
パーティーの最後に、中学生の3人が作文を読むことになっていました。最初に女の子が高校に行って夢をかなえたいという決意を伝えてくれました。次は二人の男子が読む番なんですが、少し様子が変です。一人は顔を赤くして座り込んだままで、もう一人の男子がそばについてなだめるようにしています。僕は離れたところにいたのでその時までわからなかったのですが、その男子はお酒を飲んで酔っ払っていたのです。
近くに座っていた大人に対し詰問する声や心配する声などが入り乱れて、少し騒然とした雰囲気になりました。そのとき、その男子が大きな声で「ちくしょう、高校行きてぇな」と叫びました。
3人のうち、高校に行くのは女の子だけ。残りの男子二人は就職することが決まっていました。その叫びを聞いて、あとの二人は複雑な表情を浮かべていました。早く施設を出て自立したかったのかもしれません。親に経済的な負担をかけたくなかったのかもしれません。何が理由で高校進学をあきらめたのかはわかりません。おそらく、いろんな事情が絡み合って複雑なんだろうと推測できます。いろいろと悩んだ末に出した結論が「就職」だったのだけれど、でも、本当の気持ちは別のところにあったんですね。それがお酒の力を借りて出たのです。
戦争や内戦による様々な影響や経済格差などの社会のひずみは、必ず弱者にしわ寄せがいくものです。世界中の多くの国でこのことについて問題提起もされているし、実際に援助活動をしている人たちがいますが、なかなか解決できていません。これは日本でも同じです。
みんなに持って欲しいこと
自分は入試に合格できれば高校に行けるんだから幸せだ。そう思った人がいるかもしれません。確かにそうなんだろうと思うし、高校に行きたくても行けない人の分まで勉強やクラブなどを頑張って欲しい!という気持ちも正直少しはあります。
でも、例えば児童養護施設の子どもたちはかわいそう。で終わって欲しくはないなという気持ちもあります。社会のひずみによる影響は、身近なところにも潜んでいるものだし、突然自分の身に降りかかってくることもあるからです。そんな時にどうしようもないとあきらめたり逃げたりするのではなく、自分で未来を切り開いていく力を、みんなには持って欲しいです。
また、この2組の中にも進路を決めていく中ですごく悩んだり、苦しんだりしている人がいます。周囲に気づかれないように気を遣いながら、実は今もじっと耐えているのかもしれません。クラスの仲間としてそんなの人の存在に気がつくことができて、励ましの言葉をかけたり、そっと支えたりすることができる優しさを、みんなには持って欲しいです。