教師として大切にしたいこと

心に深い傷を負ったことが原因で、ずっと教室に入れなかった女子生徒。
特別支援学級の時間割の中で担当していましたが、まだ人間関係ができているとは言えない頃は生徒の思いや状況を探りつつ、僕の存在がプレッシャーにならないように声を掛けました。

『この時間はどう過ごす?
 静かに自習しても、本を読んでもいいよ。
 もちろん何か僕に聞いて欲しいことがあったら、聞きます。
 どうしますか?』

少し考えてから、生徒は僕と話をすることを選択しました。

「なかなか眠れないんです」

『きっと毎日の生活の中でいろいろ不安を感じたりしているんでしょうね。
 あなたが眠れないこと、家の人は知っていますか?』

小さくうなずく

『よかった。
 家族に心配かけたくないから と考えて、隠す人もいるからね。
 安心しました』

「家にいるときは、ずっと自分の部屋にいます」

『思春期と呼ばれる年齢だし、いいんじゃない?』

「部屋にいても何もしないで、ずっと座っているだけです」

『いっぱい運動したら水分とか甘いものが欲しくなるよね?
 人間の体はその時に必要なものを、欲しくなるようにできているんですよ。
 きっと同じように心にも必要なものがあったら、欲しくなるようになっていると思いませんか?
 今のあなたの心がその時間を欲しているんだと思いますよ。
 いつまで必要かはわからないけど、何もしないでただ座っている時間。
 それはきっと今のあなたに必要な時間なんだと僕は思いますよ』

少し表情が和らいだ気がしましたが、どうでしょうか。
こういう時は手探り状態、こんな話の内容でよかったのかまったく自信がありません。
何十年教師をしていても、慣れることはありません。

あとで、この生徒がM先生と話をしてよかったと言っていましたよ と担任から聞きました。
ホッとしました。

教師は教育のプロなんでしょう?
そう言われることがあります。
でも、教師が相手をする子どもたちはみんな性格も能力も育ってきた環境も違っています。
うまくいくこともあれば、なかなかうまくいかないこともあります。
大学でいくら学んでも、教育関連の本をいくら読んでも、何度も研修で話を聞いても、すべてをパーフェクトにできるとは限りません。
だからこそ、学び続ける姿勢や子どもたちに寄り添う気持ちを大切にする教師でいたいです。

体力や気力にも限りがあるし、時間にも余裕がない現状では困難なことも多いです。
保護者や地域の方には、その点をご理解をいただきたいし、国や文科省には早急に実効的な対策をお願いしたいです。