文化祭の合唱でのアイデア

 僕は合唱の指導が苦手です。僕自身が中学や高校で合唱に取り組んだ経験がないし、そもそも音楽に関するセンスがないからです。
 幸い僕が赴任した中学校では文化祭の合唱はバリバリの合唱ではなく、何らかの工夫が可能な自由度のある取り組み方の学校ばかりでした。そういうことなら僕は得意なので、生徒からも意見を取り入れながらいくつかの取り組みをしてみました。もちろん失敗もありますし、取組中にトラブルもありました。でも他のクラスがやってないことをやるというのは生徒のモチベーションを維持するのに有効な気がします。それに生徒は当日まで秘密にしておくドキドキ感もあるようです。

 ということで、どんなアイデアがあったのか紹介します。

手話コーラス

 地域の手話サークルに協力をお願いして生徒に直接指導していただきました。
 ただその前に歌詞を印刷した紙と曲を録音したものを送る必要がありました。「手話通訳」ではなく「手話コーラス」となると曲に合わせて表現の仕方を工夫する必要があるので、実際に歌詞を見ながら曲を聴きたいそうです。
 手話サークルの方の準備ができたら、学活の時間に学校に来ていただくか、休日に参加できる生徒だけが参加して教えてもらうことになりますが、校外に生徒が出るとなると提出書類などが面倒です。
 手話を教えてもらったら、歌いながら手の動かし方やタイミングをそろえるためにどう練習するのか、パート別に歌う部分はどう手話で表現するのか など生徒が工夫を考えることがいろいろあります。
 また、態度や出来栄えによっては「聴覚障碍者をバカにしてるのか?」って人権問題になるとの指摘がありました。
 当然、手話コーラスに取り組む前に聴覚障碍者のことや手話や指文字などについて生徒が学習する時間を取りました。それでも手話コーラスに取り組むのに生徒の態度がひどい状況だったら、「文化祭で発表は合唱のみにする」と判断できる感覚は担任に必要だと思います。

人文字

 舞台のひな壇に並んだ時に見えるように、制服の夏服を着る生徒と冬服を着る生徒を組み合わせて人文字を作りました。
 地味な取り組みなので見ている観客の中には気づかない人もいるかもしれません。
 中学校の舞台での合唱は、3段で並ぶ程度なので細かい表示は無理です。そこで「1-1」と簡単に表示できる1年1組の担任の時限定でやりました。

アカペラで歌い始める

 合唱の初めに指揮者の指揮が始まりますが、ピアノ伴奏は止まった状態で、数人の生徒がアカペラで歌い始めます。そのあとピアノ伴奏が始まり全員の合唱がスタートするという形です。
 曲の最初の部分をアカペラにすると、全体で歌う部分が少なくなるしピアノ伴奏者のその部分の練習が無駄になるかもしれません、曲の最後の部分をアカペラにしてから全体で曲の最初から歌うと、時間が余計にかかるので時間制限がある場合に問題になるかもしれません。
 アカペラの美しいハーモニーが際立つと会場が息をのむ感じになりました。

英語で歌う

 曲選びが完全に自由選択の学校だったので、生徒にどうしたいか聞くと英語で歌いたいという意見になったので、英語の曲を選びました。
 まだ小学校で英語の授業が始まる前のころの話で、中学3年生が最後まで英語で歌ったのでフロアで聞いていた1年生が「3年生 すっげぇ」ってなりました。

ドライアイスのスモーク

 曲の途中で舞台上にドライアイスのスモークを発生させました。
 段ボールなどで簡単な装置を作り、その上にドライアイスを乗せておきます。お湯の入ったバケツにその装置をセットして舞台そでに用意しておきます。順番が来て生徒が舞台に上がる際にそっとひな壇の下にバケツを運び込みます。バケツの上の装置にはヒモがついていて、合唱曲の流れの中でここ!というタイミングに合わせてそのヒモを引くとドライアイスがお湯の中に落ちてスモークが発生するという予定でした。
 バケツは3個用意しましたが、合唱本番のタイミングではお湯の温度が下がっていてうっすらとした煙しか流れませんでした。ドライアイスを10㎏も用意したのに残念。
 ちなみにドライアイスは専門の店が少ないので、校区内のケーキ屋さんと交渉して当日の朝に受け取りに行きました。生徒会からもらえる合唱の予算がそんなにないので、事前に練習ができないこともつらいところです。

背景画にLEDを仕込む

 曲の最後の間奏の時に舞台の照明を消すと会場が おや?という雰囲気になります。そのタイミングで背景画に仕込んでおいたLEDを点灯しました。
 LEDはクリスマスツリーの電飾用なので、電飾コードの長さの範囲にしかセットできません。背景画全体にLEDをセットするには複数必要ですが、いくつもセットすると重量オーバーで舞台に吊り下げることができないかもしれません。またコンセントとつなぐためのコードの重量も考えると背景画のここ!という場所にのみセットする方がよいと思います。舞台後方に使えるコンセントがいくつもないかもしれないので、あらかじめ確認が必要です。
 LEDの具体的なセットのやり方ですが、完成した背景画の裏からペンなどで小さく穴をあけて、そこにLEDを差し込みます。あとは細く切った布ガムテープで裏から仮固定して終わりです。こんな単純な方法でも観客席から見てほとんど目立ちません。
 舞台を暗くした後もピアノ伴奏が続けられるように懐中電灯で鍵盤を照らしておいたのですが、強力なスポットライトを浴びていた状態から急に暗くなると、ピアノ伴奏者の目がくらんでしまい、ぜんぜん役に立ちませんでした。結果としてアカペラになりました。生徒たちは動揺を乗り越えてよく声を出し続けてくれました。
 暗くなると指揮棒が見えなくなるので、念のために指揮者には最初から100均のサイリウムを持たせました。舞台が明るいうちは、普通の指揮棒にしか見えないので観客の誰もそのことに気が付きません。このおかげでピアノ伴奏が止まっても合唱は続けられました。
 暗い舞台に浮かぶLEDと指揮棒。そこに大きく響くハーモニーが加わったとき、見ていた若い教師は鳥肌が立ちましたと言ってました。

背景画にメタリックカラーを使う

 アルミホイルに色セロハンを貼るか、マジックで色を付けたものをハサミで切って貼るとキラキラした背景画になります。色セロハンは広い面積に色を付けたいときには適していますが、色の種類が少ないです。
 またアルミホイルは普通の糊ではくっつかないので、液体糊を多めに使って無理やりくっつけたり、補助としてセロテープを使ったりしました。
 メタリックカラーにした5㎝角の厚紙を模造紙の上に並べてモザイク画のような背景画にしたときは、厚紙の上辺だけをセロテープで固定しました。そうすることで厚紙が少し揺れる形になって、キラキラと照明の光を反射してきれいでした。

背景画に立体的に作った文字を使う

 背景画に文字を書くことになっていたのですが、どうせならと発泡スチロールで文字を作り、それを背景画に貼り付けました。
 立体的な視覚効果が得られたのですが、当日まで背景画は丸めて教室に保管するので当日にならないと貼ることができません。だから合唱の途中で文字がはずれないか不安でした。
 それからいくら発砲スチロールで作っても、それなりの重量になります。どこに貼り付けるかによっては背景画のたるみやゆがみにつながります。

蓄光塗料を使う

 これは他のクラスでやっていたものです。
 光を当ててから暗くすると、短時間ですがぼんやりと光る蓄光塗料を背景画に使っていたものです。蛍光塗料とは違うものです。美術の材料を扱っている専門店で見つけたそうです。
 合唱が終わって舞台が暗くなると、背景画に隠されていた文字が浮かび上がりました。ただスポットライトの当たり具合によっては光が十分に蓄積しないので、合唱をしている生徒よりも背景画に光を当てるようにしたそうです。