学年通信 『学ぶ姿勢』についてのはなし 改
宇治(うじ)拾遺(しゅうい)物語より 児(ちご)のそら寝
これも今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせん」と言いひけるを、この児、心よせに聞きけり。さりとて、しいださんを待ちて寝ざらんも、わろかりなんと思ひて、かたかたによりて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにしいだしたるさまにて、ひしめきあひたり。
この児、定めておどろかさんずらんと待ちゐたるに、僧の「物申しさぶらはん。おどろかせ給へ」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへんも、待ちけるかともぞ思ふとて、今一声よばれていらへんと、念じて寝たるほどに、「や、な起こしたてまつりそ。幼き人は寝入り給ひにけり」といふ声のしければ、あなわびしと思ひて、今一度起こせかしと思ひ寝に聞けば、ひしひしとただくひにくふ音のしければ、ずちなくて、むごの後に「えい」といらへたりければ、僧たち、笑ふことかぎりなし。
学べるチャンスはいっぱいある
新しい知識を得るために何から学びますかと聞かれたら、昔なら学校などで先生や師匠または親方から学ぶか、本を読んで学ぶぐらいしかなかったと思います。今なら塾や習い事などの教室もあるし、学ぶためのアプリもあるし、ネットを利用すればブログやYouTubeなどでも学ぶことができます。
でも、みんなの身近なところにも学べるチャンスはいっぱいあります。
例えば、今の1年生棟の階段横の掲示板。いろんな情報が紹介されていて様々な見方、考え方などを学べます。掲示物は定期的に変更されているし今後も続くと思いますので、ぜひじっくりと読んでみてはいかがでしょうか。
先生から学べること
1学期末の2年生の学年集会で学習担当の先生から『学校の勉強が何の役に立つねんと言う人がいますが、それは違います。学んだことをどう生かすか、自分で考えて決めるんです。それが個性とか生き方につながります』との話がありました。冒頭の「児のそら寝」はその時にその先生が暗唱したものです。
「児のそら寝」は高校の教科書によく載っている話です。ネットで検索すれば解説するサイトはいくつもありますし、動画やプロによる朗読を視聴することもできます。国語の先生ではないのにこの「児のそら寝」をスラスラと暗唱する先生の姿を見てみんなは何かを感じたでしょうか。
このような場面でなくとも先生の言葉や行動する姿勢を見聞きする機会は、きっと授業以外でも普段の学校生活の中にあると思います。そのたびに先生から見方・考え方や発想力、知らなかった新しい知識などを学べる可能性がありそうです。
学ぶ姿勢が大切な理由
校内の掲示物も、普段の学校生活での先生の言動なども、何も考えずにただ見たり聞いたりしていたのではそこから何かを学びとることは難しいです。見る側聞く側が学ぶ姿勢を持っていなければ、何も気が付かずに見過ごしてチャンスを逃してしまう可能性が高いからです。目の前にある「学べるチャンス」を逃さず、確実にゲットするためには「学ぶ姿勢」を持っているかどうかが大切なポイントになるということです。
そうなると自分は「学ぶ姿勢」を持っているのか、気になるとか知りたいという人はいると思います。実はこの学年通信の冒頭の『児のそら寝』でわかるかもしれません。
「僧たち、笑ふこと限りなし」ってなんで? 現代語訳するとどんな話? 「むご」って何? そのように知りたいと思ったところがある。そういう人は学ぶ姿勢を持っている可能性が高いです。それどころかもうすでにタブレットで調べはじめている人や、家に帰ってからいつの時代の物語か。宇治拾遺物語とは? などこの物語の背景などについて調べる人は、間違いなく学ぶ姿勢を持っています。
まだ自分は学ぶ姿勢を持っていないかもと感じる人は、まず知らなかったことを知るって楽しいことだと思えるようにしましょう。本来人間はそういう生き物ですから、そんなに難しくないと思います。次に学べるチャンスは、あらゆるところに存在することを意識しましょう。例えば新聞を読む、テレビのニュースを見る、本を読む、人の話を聞くなどはそういう感覚をつかむのに有効だと思います。
やがていろんなことに興味を持って、知りたいことが出てきたらすぐに調べるという行動につながれば、学ぶ姿勢を確実に身につけたと言えます。そしてその人は学んだことが役に立つ場面がいっぱいあるでしょう。
1学期の終わりの学年集会は1学期のクラスの反省などを発表するのですが、時間がかかってしまったため学習に関連した話をする時間が足りなくなってしまい、中途半端な話のまま終了しました。そこで2学期の初めにこの学年通信を配りました。
ベースにしたのは下の学年通信です。
学年通信 『学ぶ姿勢』についてのはなし
https://msensei.blog/2022/12/08/about-the-attitude-to-learn/