学年通信 トイレ と 個性 と 未来 のはなし
時代遅れかもしれないピクトグラム
今回の学年通信はLGBTQの講演会の内容を受けて、トイレの話です。
◇◇中学校のトイレは入室すれば自動で照明が点灯するし、トイレ内はきれいで洋式の便器ですが、日本国内ではまだまだトイレの改修が進んでいない自治体もあります。
古いトイレでは入口に「女子便所」「男子便所」と文字だけの表示のところもありますが、新しいトイレはピクトグラムのところが多いです。見てすぐにわかりやすいピクトグラムは読字障害の人にもやさしいのでこれからも増えると思います。
でも、男女別のピクトグラムは時代遅れかもしれないって、知っていますか?
トイレの表示
図の形を見ると女性はスカート、男性はズボンで表現されています。でも女性でもズボンを、男性でもスカートを着用したい人もいます。それなのに女性はスカート、男性はズボンのピクトグラムを使っていいのでしょうか?
色は女性が赤、男性が青のイメージで違和感はない人もいるでしょう。でも、それはこのような使われ方を何度も見てきた結果、思い込まされている可能性があります。色の感じ方は多様なはずで、女性・男性それぞれをイメージする色は人によって違っているはずなのに赤と青に固定化されているのはおかしいのではないか という考え方もあるのです。ちなみに◇◇中のトイレの表示はどうなっているか知っていますか? ぜひ確認してください。
ニューヨークのトイレ
ニューヨークでは法整備が進んで、学校や商業施設、レストランなどのトイレは男女別ではなく、誰でも使える多目的トイレが増えました。具体的には通路の左右に多目的トイレがずらりと並んでいるイメージです。これなら多目的トイレの待ち時間も減るので、次に利用する人のことを気にする人や車いすの利用者でトイレの利用に時間がかかる人、さらに性自認との関係で男女別のトイレに入りにくい人、介助者が一緒に入ることが必要な人などみんな安心して利用できます。
表示もWomenとMenではなくAll Gender(オールジェンダー すべての性別)にして、ピクトグラムも工夫されています。車いすを利用する人も使える場合もあり、その場合は車いすユーザーのピクトグラムも追加されます。このようなトイレは、日本でも増えているのでいつか見かける日も来ると思います。
ただ公共のトイレをすべて多目的トイレにすることに反対の意見もあります。例えば誰でも自由に入れるトイレは、悪意のある人が盗撮カメラを置く可能性があります。だから多目的トイレは怖くて使えないというのもそのひとつです。そこで右図のようなレイアウトが考案されました。でもこれは別の問題が発生します。このレイアウトを実現するには広いスペースが必要で、設置できる場所が限られるのです。
残念ながら、すべての人が安心して使えるトイレが完成するまで、もう少し時間がかかるようです。だからみんなには考え続けてほしいです。どうすればよいのかを。
実際の学年通信では、ここにtotoのHPより パブリックトイレについての提案からの図を引用させていただきました
https://jp.toto.com/ud/public/think.htm
生活しやすい未来の社会
マイノリティ(少数者)のためにそこまで配慮する必要があるのか? そう考える人がいるかもしれません。でもマイノリティの人たちが生活しやすい社会は、誰にとっても生活しやすい社会だと考えられます。
例えば昔のランドセルは赤と黒しかなくて、女の子が赤、男の子が黒でした。そのイメージに合わせない人は周囲からいろいろと言われたし、言われなくても無言の圧力がかかって選べなかったのだと思います。今は価値観が変化するとともに個性を大切にする意識が広がり、ランドセルの色の種類も増えて自分の好きな色を自由に選ぶようになりました。周囲からいろいろ言われることも圧力がかかることもなくなったと感じます。
トイレについての話も、マジョリティ(多数者)がマイノリティに配慮するというとらえ方ではなく、素直にひとりひとりの個性を大切にする、と考えればいいと思います。
個人は周囲の人の個性を大切にする。周囲の人は個人の個性を大切にする。これって「一人はみんなのために、みんなは一人のために」に似ていますが、ちょっと足りない気がします。「自分は自分のために、自分の個性を大切にする」という視点を追加することはとっても重要なポイントだと思いませんか? こういったことが自然にできる社会は、誰にとっても生活しやすい社会だと思うのです。それは、みんなで一緒に目指したい未来の社会です。
この学年通信は、生徒向けのLGBTQの講演会でトイレの話が出たことをうけて、別の学校で書いた過去の学年通信をリメイクしたものです。 その元になった学年通信はこちら
学年通信 「トイレの表示」のはなし
https://msensei.blog/2022/11/15/toilet-indication/