新作 半鐘 と スマホ
情報伝達の方法
「情報伝達の方法」と聞くと、すぐにスマホやパソコンなどのICT機器を思い浮かべる人が多いと思います。速いし正確だし種類は多いし手軽に使えて便利だと感じている人はたくさんいるでしょうね。台風や大雨、大地震など緊急時には自動的にスマホなどに通知が来るように設定もできます。本当に便利な世の中になりました。
では、ICT機器がなかった例えば江戸時代には、情報伝達はどうしていたのでしょう? もちろん、何もなかったわけではありません。今回はその話です。
半鐘とは
半鐘(はんしょう)って知っていますか? 火災や洪水などの災害、盗賊の襲撃などが発生したときに鳴らす小型の釣り鐘のことです。昔、時代劇がいくつも放送されていたころには、ほぼ毎週どこかで半鐘を鳴らすシーンを見かけましたが、今は時代劇が少なくなりました。幸いなことに鬼滅の刃 刀鍛冶の里編で里が鬼に襲われたときに使われていたので、あれが半鐘というものなのかとわかった人もいるでしょう。
その時の使い方は、カンカンカンカンカンカンと激しく連打するものでしたが、実は半鐘のたたき方には、いくつかのパターンがあります。
半鐘の緊急情報伝達システム
火災発生時を例に説明します。(地域によって音のパターンは少し違っていることがあります)
まず大きな町だと半鐘はあちらこちらに配置されています。このいくつもの半鐘を配置していることが重要なポイントのひとつです。半鐘は火災の状況が把握しやすいように、高い火の見やぐらなどにつるされています。どこかから半鐘の音が聞こえてきたら、半鐘の担当者はすぐに火の見やぐらから広い範囲の状況の確認をして、必要であれば半鐘を鳴らします。ひとつの半鐘の音が鳴れば、半鐘の緊急情報伝達システムが起動することになります。
火災が発生したことを知らせるたたき方は、カン カン カン と一点打です。この段階では火災現場は遠いので慌てることはありません。落ち着いてどの方向から半鐘の音が聞こえるかがわかれば、そちらの方向に火元があるとわかります。それが自分のいる位置に対して風上にあるか風下にあるかによって、避難準備をするのかを判断します。
消火活動を担当する火消し隊の出動を要請する場合にはカンカン カンカン と二点打になります。これで火災の規模についてなどの情報が増えます。
さらに火災が近くに迫ってきた場合にはカンカンカン カンカンカン と三点打になります。三点打を聞いて避難のために外へ出たけど火災現場が煙や建物で見えない場合、半鐘の音をよく聞いて一点打や二点打が聞こえる方向へ逃げればよいのです。
もしも カンカンカン とか カンカン とあちらこちらから聞こえてくる場合は、かなり大規模な火災だとわかります。急いで避難が必要です。火災が広がってきてすぐ近くまで火が迫ってきたときは、カンカンカンカンカンカンカン と連打します。そしてこの半鐘の連打の音が聞こえなくなったときは、かなり危険な状況です。半鐘を鳴らしていた人が避難したということだからです。
でも音が聞こえなくなったら火災が鎮火したと勘違いするかも? と考える人もいるかもしれませんね。当時の人もそのあたりのことは考えていて、鎮火しましたという合図もあります。カン カンカン カン カンカン と一点打と二点打を交互に鳴らすのです。
この半鐘のシステムは、住民に避難を促すだけではなく、火消し隊を火災現場に誘導する役割も果たしています。また、洪水や盗賊の襲来の場合でも、水や盗賊はどこから来ているのか、どこへ逃げればいいのかを知らせることができます。
よく考えて工夫されたシステムだと思います。
スマホに頼らない人間関係
友達と連絡を取る方法として、スマホしか思い浮かばない人がいます。そんな人はスマホがないと絶望的な気分になったりします。
でも、思うんです。スマホや携帯電話がなかった時代、子どもたちは帰る前に誰と何時にどこで待ち合わせをするか約束をしているだけでした。急に用事が出来て待ち合わせ場所に行けず結果として約束を守れなかったとしても、翌日「昨日はどうしたの?」「実は急に用事が…」「そうなんだ。よかった。病気やケガをしたのかと思ってたから。今日は遊べる?」そんなやり取りで済んでいたような気がします。連絡手段がなかったからこそ「寛容さ」があったのではないかと。
ところがスマホや携帯電話でいつでもすぐに連絡が取れるようになると「寛容さ」を失ってしまい、約束が守れなかった相手を責めるような人が増えた気がします。人間関係を維持するだけではなく、さらに成熟した関係に発展させていくためには、相手を許す「寛容さ」を持って欲しいし、お互いに自分の気持ちの伝え方に工夫がほしいなと思います。
さらに、人間関係の多様さも意識してもらえたらな と思います。具体的に言うとスマホでつながる人間関係はもちろんあっていいのですが、スマホに頼らない人間関係も模索してほしいのです。様々な方法で人とつながることができる人は、豊かな人間関係を持っている。そう言えると思うからです。
最初からそんなことは無理だと決めつけないで、スマホのアプリに頼らない人間関係を作る工夫を考えてみませんか?