NASA実習から学ぶこと  ロングバージョン

NASA実習とはGWT(グループ ワーク トレーニング)のひとつで、グループで話し合いながら課題に取り組む中でいろんなことを体験的に学ぶものです。
NASA実習に関する学級通信は、今までにも2回このブログに投稿していますが、今回のものは解説が2倍あるロングバージョンです。

NASA実習

 6組では2月に入ってから2日間かけて、GWT(グループワークトレーニングの略)をやりました。GWTとは、課題に取り組む中で人間関係のことなどを体験的に学ぼうとするものです。今回のGWTはNASA実習といい、月で遭難したときにどうするかという課題で、まず個人で考え、それをもとに班で話し合って班での考えをまとめてもらいました。次に正解を発表し、正解との差を求めました。以上の結果をまとめると別表のようになります。
 このNASA実習は、班を構成する個人と班との関係について考えてもらおうという目的があります。ですから、一覧表の中にいくつかの計算結果等が含まれています。それらについて説明します。今回は1回目と2回目の日程があいてしまい、また、欠席者が多くて3人だけで話し合った班があるなど、充分な討論の条件ではありませんでしたが、結果はどうだったのでしょうか。
 「①メンバーの点数の最小値」は、班の中で最も成績の良かった人の点数です。正解との誤差が小さいほど良かったわけで、6組の中では26点をとった2人が最高でした。
 「②メンバーの点数の平均値」は、この課題についてその班が持っている能力をあらわしています。
 「③班の点数」は、班としての成績です。ごらんのように3班がトップです。しかし、それで終わらないところが普通の遊びとGWTの違うところです。

班で考える効果

 「④グループ効果」は、その班の能力を表す「②メンバーの点数の平均値」から班の点数である「③班の点数」を引いた数値ですが、班の決定を考える時に、討論によってどれぐらい班の能力を引きあげることが出来たかをあらわしています。この数値がプラスになれば討論することで班の能力をUPさせ、平均を上回る結果を引き出せたということです。また、この数値が大きいほど討論の効果があったことになります。
 6組の結果を見ると5つの班でプラスになりました。もっと時間をかければさらに大きなプラスになったかもしれません。実際に3年前にやったクラスでは23.5という結果を出した班があります。さらにくわしく見てみると、班の点数は誤差が48点もあった6班よりも30点だった1班のほうが上です。しかし、グループ効果ではわずかですが逆転しています。
 「⑤人的資源の活用」はメンバー個人の能力、特に最も個人成績の良かった人の能力を班としてどれぐらい活用したかをみるものです。これも数値が大きいほど個人の能力を活かしている班だということになります。

 「良い討論」の条件の中に、メンバーひとりひとりの意見をどれだけ引き出せたかがあります。今回のNASA実習では、班の中で最も成績が良かった人の点数と、班の点数とを比べることでそのあたりを見ることになっています。それが「⑤人的資源の活用」なんですが、そこを見ると3つの班でマイナスになりました。中にはクラスの中で最高の点数を出した人が班の中にいたのに十分活かせなかった班があったことも分かります。
 討論がうまくできてメンバーの意見を引き出すことができると「①メンバーの点数の最小値」、つまりその班の個人の最高得点を上回る班の成績が出せることもあります。もう一度「⑤人的資源の活用」のところを見ると、6組の場合、2つの班がこれを達成できました。このような状態をことわざで『三人寄れば文殊の知恵』といいます。一人で考えるよりも、複数で考えた方が、良い結果につながりやすいことを、昔の人は体験的に知っていたのです。ちなみに、3年前のクラスでは達成できた班はひとつもありませんでした。

班の力を発揮するには

 個人で何か考えるよりも、班で討論することで良い結果が得られやすいのは事実ですが、いつもそうなるとは限りません。逆に悪い結果につながる場合もあります。うまくいかない原因はいくつか考えられます。

① 班のメンバーが、自分の意見を言わなかった。
多くの意見を参考にして考えることで、班としての能力を発揮できるのに、自信がないとかめんどうくさいから等の理由で、意見をいわずにずっと黙って座っている人がいれば、当然班にとってプラスにはなりません。
班の中に自分と合わない人がいるとか、自分の思い通りに行かないから等の理由で、心を閉ざしてしまう人を見かけることもあります。自分が所属している集団の中で、課題を達成するために自分の能力を発揮しないことは、長所を失うことにもつながります。各個人が気をつけるとともに、班の中の雰囲気がどうだったのかということにも注意し、必要であれば対策を講じるべきです。

② 班のメンバーが、非協力的で誰かにまかせっきりであった。
班の中の誰かに任せるということは、「集団で考える」ことにはなりません。もしも良い結果が出たとしても、それは単なる偶然であり、それが何度も続くことはありません。
また、まじめに課題に取り組めない人がいると、周囲もやる気を失ってしまいます。そんな状況では班の力を発揮することは困難です。

③ 「討論」をしなかった
手っ取り早く結論を出すために、「討論」ではなく他の方法を選んだ場合です。例えばメンバーの答えの平均を取るとか、とにかく多数決で決めてしまうと、少数意見を尊重することがないままに結論を出すので、良い結果につながりにくいのです。
討論をしてみんなが納得するには、その班のメンバーの根気とたっぷりの時間が必要で、面倒がってはよい結果は得にくいものです。だから昨日、話し合いをする前に「コンセンサス(合意)」という言葉にも触れながら、全員が納得するようにと説明したんです。

④ 班の中に、個人を大切にする雰囲気がなかった。
NASA実習では、月に関する知識も大切ですが、残された品物で本来とは違う使い方を思いつくことができるかという「発想力」も大切です。例えばピストルを推進力に使おうなんて発想は、全員ができるものではありません。そのある意味大胆な発想を受け入れる雰囲気がなければ、思いついたことが言いにくくなります。
つまり、いろんな考え方を大切にする=個人や個性を大切にする という雰囲気が班の中になければ、班の力を引き出すことはできないのです。

他に討論の進め方そのものに慣れていなかった。司会をする人、意見をまとめる人、別の見方をする人など役割分担ができなかった。たまたま成績が悪かった。などの可能性が考えられます。

「④グループ効果」で唯一マイナスになった2班は、何が原因だったのかわかりませんが、この結果だけを見て2班はだめだということにはなりません。ひとりの人間が持っている能力はたったひとつではありません。いくつもあるはずです。そんな人間が集まってできた『班』もいくつもの能力があるはずです。今回のNASA実習というたったひとつの基準でその班やその班のメンバーの優劣を決めつけるのはおかしいです。

さらに、今回の経験を活かして、次回同じような課題に取り組んだときには、きっと大きく改善されているはずです。人間は経験を積んで成長できるからです。今回の結果だけを見て、将来もずっと同じだと決めつけることも、またおかしいのです。

まとめ

○ 集団が力を発揮するためには、まずいろんな発想や考え方を持った多様な個性が必要です。だから、個性を大切にしない「いじめ」などは絶対に許してはいけないのです。

○ その上で自分の個性を活かすように考え、行動してください。自分の能力を集団の中で活かしたとき、その能力を長所といいます。そのために視点を個人と集団とにバランスよく向けていくように心がけてください。そうすれば、班の中の良い雰囲気も作りやすいはずです。

○ 「討論」を大切にしてください。きちんとルールを守り、全員が討論に参加することで集団の力は大きく発揮できるのですから。