人はなぜ勉強するのか その2

判断力をつけるために学ぶ

 人生では「決断」をしなければならないことがよくあります。受験とか就職、結婚など人生の節目だけではなく、いろんな場面で「決断」することが必要になってきます。大人になるにつれて「決断」をする回数は増えるとともに、どのタイミングで、どのような内容で「決断」するかの『判断』がむずかしくなります。
 手本や見本になる前例もなく、頼れる人もいないのに「決断」を求められ、とにかく『判断』してみたけれども、それが思わぬ結果につながることがあります。判断を誤ったために、問題が余計に大きくなったニュースを見たことがありませんか? そうなった場合、判断した人は結果に対してとても重い「責任」を負わなければなりません。
 正しい判断をするためには、情報を集めてその内容をきちんと把握し、問題点を整理し、どんな対応方法があるかを検討してから判断するということが必要です。ものすごい頭脳の作業量です。こういったことをこなし、正しく判断する力を身につけるには様々な考え方を学び、実際に何度も繰り返し考えることで脳を鍛えることが必要です。また、一見必要ないと思えるような知識でも、それらを組み合わせることで違った対応ができるかもしれないし、新しいアイデアが生まれるきっかけになるかもしれません。つまり幅広い知識を獲得していることも必要なのです。だから、学校ではいろんな教科で、いろんな思考法や知識を繰り返し学ぶのです。

可能性があるから学ぶ

 将来就職すると、取引先の代表と会って話をするなんてことがあると思います。そのときにどんな話題が出てくるかわかりません。相手の生まれ育った故郷の話、好きなクラッシック音楽や絵画の話、オリンピックや天気の話。いろんな話が出てくる可能性があります。その話題についていけないと、取引先の代表と気まずい雰囲気になるかもしれません。学校で基本的な知識を得ておけば、対応できる可能性が大きくなります。
 また、みんなには無限の可能性があります。10年後、20年後にどんな職業についているのか誰にもわかりません。現在はこうなりたいという夢があったとしても、新しい生活の中で今まで知らなかった世界が広がり、夢が変わるかもしれません。どんな職業を選択しても対応できる基礎を築くために、幅広く学んでおく必要があります。そのために学校で様々な教科を学ぶのです。

人間だから学ぶ

 いろいろと話をしてきましたが、ひとまずこれで最後です。先生としては、これが最も大切な学ぶ理由だと思っています。
 人間って、新しい知識を知ることで喜びを感じる生き物です。テレビ放送が始まって以来、いろんなクイズ番組や情報番組が毎日放送され続けている理由がそこにあります。テレビ番組の中には、ほんとに役に立たない知識ばかりでてくる番組もありますが、それでも知らなかったことを知ると、人間はおもしろいって感じてしまうんですね。
 長い進化の歴史の中で生物は生きていくために必要な能力を発達させてきました。ある生物は早く走る能力を。ある生物は海に深く潜る能力を。他に、夜でも見える視力や空を飛ぶ能力など様々です。人間はまず手を発達させ、それから脳を発達させました。その結果、思考能力が飛躍的に増大し、膨大な知識を記憶することができるようになり、新しい知識を知ることを喜びとして感じることができるようになりました。
 本来、学校で勉強する内容も新しい知識だから、おもしろいはずです。ところが世の中の多くの人たちは、勉強はイヤだと思っています。『なぜ勉強ってしなくちゃいけないの?』と小学生に質問されて答えることができず、とっても困っている大人たちをテレビで見たことがあります。その大人たちは子どものころに勉強を楽しいと思ったことなどなかったのではないでしょうか。
 ある人が公立高校の受験に失敗し、私立高校に行くことになりましたが、幸いなことにその高校はその人に合っていたんでしょう。その高校で勉強って面白くて楽しいものなんだということを知りました。中学校までは、すぐに就職するのはイヤだからとりあえず高校に行って、その後適当に就職するつもりでした。
 でも、高校生活の中でもっと勉強したいと思うようになったその人は大学に進み、今では教える立場になりました。その人は今、この中学校にいます。そして、今でもその時に習った内容を授業等に活用したりしています。みんなには、勉強は「やらされるもの」ととらえるのではなく、次はどんなことを知ることができるのかな?と前向きにとらえて、勉強って面白く楽しいと思えるようになって、ずっとずっと学び続けることができるようになって欲しいと思います。

 人は、なぜ勉強するのか。 それが、「人間」だからです。