『やさしさ』と『笑い』
喜べる話ばかりでは…
私立高校の入試の結果がほぼ出そろいました。合格通知が届いてそのことを報告するために学校に電話したけど話し中ばっかりなので、直接学校に来て報告してくれた人がいます。その気持ちがすごくうれしかったです。また、合格したことがうれしくて、泣きながら電話をしてきた人もいます。本当に良かったなぁと思うし、こっちまでうれしくなります。
そういえば、入試の時に緊張のあまり頭が真っ白になったけど、僕が贈った鉛筆を見て落ち着きましたという話をしてくれた人もいました。少しでも役に立てたのならこれもうれしい話です。
このように喜べる話ばかりだといいのですが、残念ながら望む結果にならなかった人も2組の中にいます。こういう時にどう反応すればいいのか。同じクラスの一員として困ってしまう人がいるかもしれません。どうやさしく接すればいいのか、わからないということなんでしょう。
やさしさには種類がある
私事で恐縮ですが、10年ほど前の年末に、アイススケート教室の新聞チラシがありました。それを見て子どもたちにスケートを経験させてみようかという話になり、妻が申し込みに行くことになりました。ちょうど受け付けを開始する時間に着いたんですが、すでに数十人も並んでいる状態。しかも、ひとりひとりの手続きに時間がすごくかかり、3時間待ってもまだ順番がまわってこなかったんです。
並んでいる人たちの中にはイライラする人もいるし、妻も一番下の子がまだ幼稚園だったのでその迎えの時間が気になって大変だったようです。でも、そんな状況の中並んでいる見ず知らずの人たちが、ごく自然にお互いに協力しだしたというんです。寒い中で長時間並んでいるからトイレに行きたくなります。そこでお互いに声を掛け合って交代でトイレに行きました。まだ幼稚園にも行かないような幼児を連れている方がいて、その子がぐずりだして困っているお母さんには、近くの公園に遊ばせに行ってもらいました。他にもいろんなことがあったそうです。日本っていい国だなぁと思います。
中でも一番すごいなぁと思ったのは、時間をすごく気にしている妻の様子を見かねて「私が代わりに申し込みをしてあげましょうか? お金を預かることになりますし住所や電話番号を私が見てしまうことになりますけど。その紙は、きちんと処分しますから、それでよければ。」とおっしゃって下さった方がいたこと。その人権やプライバシーに配慮するバランス感覚もすごいし、そのご好意に甘えた妻もすごいと思ったのです。
人が持っているやさしさにもいろんな種類があります。人に対して何かをしてあげるというやさしさはすぐに分かると思いますが、他にわざと相手に厳しく対応することが本当のやさしさだということもあります。結構気づきにくいのが相手の優しさを受け入れること。意地を張って拒否したり、変に遠慮したりすることなく、状況に応じて相手の好意にきちんと甘えることも大切なやさしさなんです。
やさしさを押し付けることになったら迷惑だし、甘えるばかりで周囲にやさしさを要求するようになっても困ります。文字にしてしまえば『相手のことをどこまで考えることができるか』ということに尽きると思いますが、大人にとってもこれはけっこう難しいことです。君たちは、これからいろんな人といっぱい触れ合い、その中で少しずつ学んで、『本当のやさしさの使い方』を身につけた大人になってください。
笑いにも種類がある
もうひとつ、みんなに考えて欲しいことは笑いの内容です。意表をつかれて笑う。失敗をごまかすために笑う。何かを達成して笑う。などなど「笑い」にもいろんな種類があります。
テレビで若手芸人などをひどい目に合わせて笑いものにする番組をたくさん見ていて、無意識のうちに同じようなことをしてしまう人が多くなっている気がします。でも、いらぬちょっかいをかけたりして、その人が困っているのを見て笑うなんてのは、やっぱり君たちが目指すべき笑いではありません。なぜなら、そこにいるすべての人が心から笑える内容ではないからです。一部の人は笑えるかもしれない。でも、嫌な思いをする人がいるのであれば、それは場合によってはいじめになってしまいます。
気のおけない友達と一緒にいることで自然にあふれる笑い。クラスの中に支えあう仲間がいて、そこに居場所があって、ほっとできるときに顔がほころぶような笑い。そういったみんなが心から笑えるような、そんな笑いがたくさんあるクラスを目指すべきではないでしょうか。