『人権学習』のスタート
親子丼の理由
ずいぶんと昔になりますが、視覚障害者の方と一緒に食事をしたことがあります。「何を食べたいですか?」と聞くと「和食の店がいいです」ということだったので、和食の店を見つけて入りました。その方は親子丼を注文しました。
次に一緒に食事に行った時も「和食の店がいい」ということで、その方はまた親子丼を注文しました。それで僕は「親子丼がお好きなんですね」と聞くと「いいえ」と返事が返ってきました。続いてこんな話をしてくれました。
「洋風の店だと大きな皿にいろんな食材が並べられていることが多いです。でも、それでは私のように目が見えない者は、自分が食べたいものを選ぶことがむずかしいんです。適当にスプーンを動かしてすくったものか、偶然フォークに刺さったものを食べるしかありません。お肉が食べたいと思っても野菜が続くこともあります。しかも、口に入って初めてその食材が何なのかわかるんです。
それに、スプーンやフォークよりもはさむことができるお箸の方が目の見えない私には扱いやすいんです。だから外で食事をするときには、どうしても和食の店が多くなります。しかし、やっぱり定食のようなものは注文しにくいです。店によって品数や盛りつけ方が全然違うからです。
その点、丼なら食材が分かれていないので食べるのが楽です。でも、カツ丼になるとお箸でカツをはさんだ時に、カツのどのあたりをはさんでいるのかがわからないのでカツを落としてしまうかもしれません。しかも、その落としたカツがテーブルの上に落ちたのか床まで落ちたのかわかりません。口の周りや服を汚すかもしれません。その汚れ具合もわかりません。
だから、丼に直接口をつけて食べることができて、具を落としたりしにくい親子丼を注文することがどうしても多くなってしまうんです。決して親子丼が大好きなわけではありません。」
僕は、視覚障害者を道案内する時のやり方などいろいろと知っています。それだけですべてを理解しているつもりでした。でも、それがあくまで『つもり』でしかなかったことを思い知らされました。
人権学習の発表
昨年から長い期間取り組んできた人権学習の発表が先週ありました。1組では何を書くのか、どんな紙に書くのか、どのように書くのか、そういったことから班で話し合いをして決めてもらったので、模造紙、色模造紙、画用紙、色画用紙など種類も枚数もいろいろあって、教室の後ろに掲示された作品はなかなか個性的なものになっています。
自分たちで調べたことをまとめて発表するという機会は、社会人になってからもあります。僕も公開授業でたくさんの先生の前で発表したことがあります。最初はどうしていいのか戸惑うこともありましたが、僕の通っていた高校で班ごとに調べた事を発表して進めていく授業があって、その経験が役に立ちました。社会人の発表は、場合によってはその結果が給料に影響するかもしれないのですから、今回の経験を大切にして欲しいと思います。
でも、それよりももっと大切にして欲しいことがあります。それは、人権の問題についてこだわり続けてほしいということです。本で調べて、インターネットで調べて、リバティ大阪に行って調べて、ほかの班の発表を見てさらに学んできたわけですが、これですべてを知ったわけではありません。「こだわり続ける」ということは、これからも学び続けることを含むのです。そして、もうこれで十分だと安易に考えない事も含んでいます。
さらに、ずっと考え続けることも「こだわり続ける」のなかに含まれます。これから先、人権のことでどう判断し行動するのかを問われることがきっとあります。その時に正しい判断ができるようにするためです。今回の人権学習の取り組みは、これで終わりではなく、スタートなのです。