臨時講師として意識したこと

 講師登録を怠って、4月から無職に。その後病休の方の代わりに支援学級の授業を担当する臨時講師として声がかかり、9月13日から12月23日まで勤務しました。無職の期間にTwitterをはじめて、学校現場の悲惨な状況を把握していたこともあって、短期間ではあるけれど少しでも勤務する学校の役に立てるよう考えていました。
 実際にやってみて、これは今後同じように期間途中から講師をする方や、新規採用で初めて学校現場に立つ方にも役立つのかもしれないと思い、Twitterでツイートしたものに加筆してここに掲載することにしました。

自分が教師や生徒のために役に立っていると実感できるようにする

 段ボールたまっていたらまとめてヒモでくくって古紙倉庫に持っていく。職員室の印刷機の紙を補充する、シュレッダーの紙くずを処理する。教室のカギの返却状況を見て、返ってなかったら教室へ見に行く。教室の消毒作業を手伝う。など気がついたら何でもやる。毎日やる。すぐ動く。そうやって自分の存在意義を認識するというか、誰かのために自分は役に立っているということが実感できれば、やる気を維持できます。
 初めのころは赴任先の学校の雰囲気や仕事のやり方に慣れていないから、戸惑うことが多く、疎外感を感じる部分もありました。だから自分が学校に存在する価値も感じられませんでした。
 そこでまず、自分で自分を褒められるようにしようと考えました。ちっちゃなことでいいから進んで行動し、それを継続すればいいだけなんだって思うと気が楽になったし、やり方を教えてもらったり、ありがとうと言われたりすることで、周囲との交流が増えました。

老害と言われないようにする

 Twitterなどでは定年退職をしたか、もう少しでするような年代の教員を一括りにして「老害」と呼ばれているのを見かけることがありました。それが絶対に嫌だったのでいろいろと心がけました。
 職員会議で提案されたときにはいなかった教師が、いきなり「前任校では~」と言わない。僕は短期間しかいないのだから、学校をかきまわさない。そのことをマイルールとして守り続けました。
 学校によって行事や生徒会活動などの考え方や進め方は違うものです。だから自分の感覚で判断して提案するのではなく、その学校のやり方をまず受け入れて尊重する姿勢を大切にする。
 若い教師が多い学校だったけど、コロナ対応による制限からの過渡期だから誰が企画してもうまくできない面はあったはず。それに、僕にはない発想を知ることができたので僕にとってもよい経験だと思いました。
もちろん、あとで僕の気がついた点は、押し付けにならないようにアドバイスしました。

褒める

 4月からの人間関係ができている職員室に、突然9月に臨時講師が飛び込むのだから話に入りにくいし、疎外感を感じるのは当然です。周りの教師も忙しく疲労もたまっているので、飛び込みの臨時講師にかまう余裕がありません。ますます孤独感を感じる原因になります。
 そこで僕は、がんばって褒めることにしました。褒められて嫌がる人は少ないし、褒められた先生の僕に対する印象も良くなるので話もしやすくなります。教室の掲示物、授業、生徒と話をしている様子、職員室での仕事の様子などいいなぁと思ったことを褒めました。

 褒めてみてわかったことがいくつかあります。
 どの若い教師にもすごいなぁって思う所や頑張っているなぁと感じるところがあります。でも、若い教師は自分がやっていることの価値がわかっていないことが多かったです。僕に褒められることでその価値に気がつき、今までやってきたことに自信が持てるし、やる気につながります。あと、どうやらベテランが褒めるとこれらの効果が高いです😊
 褒めるためにはその相手のことをよく見ないといけません。その見方が僕自身を成長させてくれたと思います。それに職員室の雰囲気も良くなるので、僕自身も居心地がよくなります。

僕の考えや行動をどんどん見せる

 僕が見せた考えや行動をどう受け止めるかは、それを見た教師に任せます。短期間しかいないのに、周囲の教師から僕がどう思われるかを気にしてたら、見せるチャンスを失ってしまうので、見せることを優先しました。
 でも押し付けてはいけません。そのことは常に意識しました。
 12月までいた学校は若い教師が多く活気はあるけど、経験不足から判断に迷って立ち止まる場面がありました。だから、僕の考えや行動を見せることで経験不足を少しでも補えたらと考えたのです。
 最後の飲み会の時に、若い教師に「M先生のおかげで、あちこちの穴が埋まりました」と言ってもらえたので、どんどん見せてよかったと思いました。

実際にやったこと。
 文化祭で次の発表のために急いで舞台上の片づけをしなくてはいけないのに、生徒会担当教師と生徒会本部だけに任せて見てるだけの教師ばかりでした。だから僕はすぐに舞台に上がって片づけを手伝いました。
 学年通信をどんどん作って、見せました。タブレットの使い方のマナー、生徒会役員選挙の立候補の呼びかけ、トイレの工事にからめて人権学習、勉強への取り組むように促す。など、それぞれの場面でどのような文章を書けばいいのかの参考になったと思います。できた学年通信を生徒に配布するかどうかは、その都度学年の教師に決めてもらいました。
 他に懇談の時に、担任が学習面での話をするときの参考になる資料を作成し配布。職場体験に向けて生徒に配る副読本のような内容のシミュレーション物語の作成。学期末のクラスレクで使えるネタの講習会を学級委員に実施。同じく学年レクとして変則コートのドッジボールのアイデアを伝達。などをやりました。

観察と傾聴

 言葉による表現が苦手な支援学級の生徒がいます。だからよく観察し、耳を傾けるようにしました。
 と、かっこよく書いてますが実際にはなかなか支援学級の生徒の理解には時間が必要です。支援学級の担任に聞くと的確な解説が聞けて、さすがだなぁと思いました。観察と傾聴は、まだお互いになじめずコミュニケーションが十分に取れていない同僚にも有効かな?と思って、意識しました。
 特に担任が若い教師ばかりだったので、僕から質問をし、教室内を観察して、それぞれの担任が何を考えているかを理解するようにしました。
 支援学級の生徒にしても、学年の教師にしても考えていることが理解できるようになると、僕がどのように手を差し伸べたらいいかがわかるようになります。その結果笑顔が増えたことは、僕にとって自信につながったし、若い感性は僕の学びにもなったので、Win Winだと思いました。

最後に

 この学校を去る直前に、学年主任が「日が経つにつれて、学年の中でM先生の存在が大きくなっています。病休の先生が復帰することは喜ばしいことですが、そのこととM先生がいなくなることとは別です」と話していたことを、校長から聞きました。
 僕としては、こんな短期間での勤務も支援学級の授業しか担当しないことも初めてだったので困惑や不安が大きかったのですが、前向きに頑張ってよかったと思いました。