一年の計は元旦にあり

自問自答の毎日

 3学期に向けて教室内の飾りをクリスマスからお正月へ入れ替えるために、冬休みのある日、1組の教室に行きました。2学期の終業式の日に教室の床のワックスがけをしたので、生徒用の机やイスはすべて教室の後ろにかたまっている状態でしたから作業はしやすく、1時間もかからないで飾りを入れ替えることができました。
 その後、僕はちょっと考えました。始業式の日にみんなが登校してきたときに備えて黒板に「机やいすを元に戻しておいてください」と書いておくか、それとも何も書かないでそのままにしておくか、ということについてです。
 「机やいすを~」と黒板に書いておけば、指示もわかりやすいし丁寧だと思います。けれども、なんでもかんでも担任が指示しなければ行動できないのもどうかと思います。「誰かからの指示を待つだけで、自分で考えようとしない人は採用したくない」という企業の人事担当者の話を見聞きすると、こういうことの積み重ねが大事なんじゃないかと思うのです。でも、そんな些細なことで人は変わるか? と言われれば自信を持って反論しにくいです。
 結局、僕は黒板に何も書かないということを選択しました。始業式の日の朝、教室に行ったらちゃんといつもの座席になっていました。でも、だからといって本当に黒板に書かなかったことが正解だったのか、なかなか難しい問題です。このようなすぐに正解が出せないようなことをしょっちゅう自問自答しながら、教師としての毎日を過ごしています。

教師として嬉しい時 悲しい時

 去年、教師としてとても嬉しかったことがありました。ある大学の学園祭に行った時に、偶然以前担任していた卒業生に会ったんです。もう大学生になっていたその卒業生は中学生だった時、自分に自信がなくて消極的になり、そのためか周りの人たちとうまくコミュニケーションがとれず、普通に話ができる友達はごくわずかで、物静かな女の子というイメージでした。どの高校を受験するかを決めるのにもとても時間がかかり、中学校を卒業したあとも少し気になっていたんです。
向こうの方から「M先生!」と声をかけてきたんですが、その顔を見たらそんなイメージはどこにも見あたりませんでした。明るい笑顔で、毎日が楽しくて仕方がないといった雰囲気を感じさせます。そばには彼氏が一緒に立っていて、よく見たらその彼も卒業生。懐かしくて、3人でしばらく話をしたんですが、悩みに悩んで進学することに決めた高校が彼女には合っていたようで、「高校で鍛えられて、自分でも強くなったと思います」と言っていました。大学も少し家から遠いけれども自分の希望の学校に進むことができたし、自信を持って毎日を過ごしているようで、そんな話を聞いて僕はとても嬉しかったのです。
 逆に去年、とても悲しかったこともありました。ずいぶんと前に担任していた生徒がニュースに出ていたのを見たことです。良いことで出ていたのなら嬉しいのですが、そうではなかったのでとてもびっくりしました。一体何があったんだろうと考えてみても何もわからず、とても悲しくなりました。

一年の計は元旦にあり

 君たちも、これから長い人生を歩んでいきます。その時間の長さに比べたら、中学校で過ごす3年間はほんのわずかな時間だと言えるでしょう。でも、その3年間に経験したことや身につけたことがきっかけになって、未来は少しずつあるいは大きく変わっていくかもしれません。
 結局は、未来って確定していないから、一日一日をどう過ごすかによってどんどん変わるものだったりするんですね。だから、毎年初めに過去の自分を振り返ってこれからのことを考えることが大切だということで「一年の計は元旦にあり」と言われるのでしょう。
 とりあえず、君たちは残された1年1組での生活を大切にしてください。勉強や部活を頑張る。掃除や係の仕事にきちんと取り組む。そういったことももちろんですが、先日話したようにお互いに支え合えることができる人間関係をつくるとか、中学校を卒業したらどうしようかを考えることも大切にしてください。