ウサギとカメの話から学ぶこと

 ウサギとカメのお話はたぶんみんな知っていると思います。このお話を題材に今日は、いろんなことを考えてみたいと思います。

ウサギはずるいか

 この話に出てくるウサギはずるいと感じている人は多いでしょう。ウサギとカメとでは、最初から走るスピードに大きな差があります。普通に競争すればウサギが勝つのはあたりまえです。それがわかっているのに、自分よりも遅いカメと競争するなんて、ウサギはずるいという考え方です。きっと、脅迫したか、あるいはうまく話をしてだますか、カメを怒らせるなどの方法で、こんな不平等な条件の競争をすることを約束させたのでしょう。
 ところが、その説に対する反論があるんです。ウサギはやさしいのではないかと言うものです。たぶんカメは、あまりの遅さに誰にも相手にされず、競争なんて経験したことはないでしょう。そこで心やさしいウサギはカメに競争を持ちかけたのではないか、というのもそのひとつです。

カメはずるいか

 カメの方こそずるいという考え方があります。きっかけはどうあれ、カメはウサギと勝負することを約束しました。たとえ負けることがわかっていても、勝負ですから正々堂々とゴールを目指すべきです。
 その途中で、ウサギが眠っているのを見つけたら起こしてあげる。それが正々堂々の勝負というものでしょう。なのに、これはチャンスとばかり、眠っているウサギのそばをそっと通り抜けて先にゴールしてしまうなんて、カメの方こそずるいではないかという考え方です。カメはそんなに負けるのがイヤなら、最初から競争することを約束しなければよかったのです。
 もちろん、この説に対する反論もあります。ウサギの自業自得ではないかというものや、カメは一生懸命ゴールを目指して走って(歩いて?)いたのできっと眠っているウサギに気がつかなかったに違いないなどです。
 ウサギとカメ、一体どっちの方がずるいのか。本当のところは誰にもわかりません。だいたい、なんでウサギは競争しようと言い出して、カメもその申し出を受けたのかもわかりません。もしかしたら作者もそんなことまで考えてはいなかったのではないでしょうか。

ウサギの生き方、カメの生き方

 ウサギもカメも、それぞれ能力も違うし、生き方もまったく違っています。どちらが優れているかなんてことは簡単には言えません。それよりもウサギはウサギにあった生き方をするべきだし、カメはカメにあった生き方をするべきです。ウサギがカメの生き方を目指したり、カメがウサギの生き方をしようとすれば、どこかでおかしくなってしまうような気がします。
 ウサギやカメと違って、人間は脳をすごく発達させた生物です。そのために同じ人間という生物に分類されても、ひとりひとり考え方や価値の基準には大きな差があります。だから、ひとりひとり生き方も違っていてあたりまえです。
 もうすぐある懇談で、中学校卒業後の進路について話をします。まだまだ続く長い人生のうちのごく一部であるこれからの数年間について考え、決断しようというわけです。それぞれの考え方、個性、生き方などにあわせて、進路を選んでいくのです。
 がんばりたいクラブで選ぶ、学校の雰囲気で選ぶ、学ぶ内容で選ぶ、費用で選ぶ、家からの距離で選ぶ、大学とのつながりで選ぶ、共学かどうかで選ぶ、制服で選ぶ、自分が将来就きたい職業につながるところを選ぶなど、選ぶ基準はいっぱいあります。さらに、これらの基準をいくつか組み合わせることもあるから、それこそいろんな選び方が出てくることでしょう。どんな進路を選ぶかも『個性』だし、それが『生き方』になるのだと思います。
 いろいろと考え、悩んで選んだ進路は、他人と比べて優劣をつけるものではないし、周囲の人から非難されるものでもありません。その人の『生き方』ですから、きちんと尊重されるべきものです。ウサギにはウサギらしい生き方、カメにはカメらしい生き方があるように、君たちにも君たちらしい生き方がかならずあるはずです。それを目指しましょう。
 ただ、自分の望みだけで進路を決められないのが人間のつらいところです。入試で合格しなければ、先に進めないという現状も確かにあります。いろいろ条件はあると思いますが、その中でも自信を持って、胸を張って自分の人生を歩んでいける進路をしっかり考えましょう。