夢 と ディスカウント

高校選びはディスカウント?

 僕がまだ若かった頃の経験では、中学校時代にいじめの問題等で苦しい思いをした人が受験を乗り越えたことによる自信とか、勉強をがんばった自分に対する自尊感情が芽生えたりして、それが良い方向にはたらいて、いじめのない新しい高校生活を送っていることがよくありました。笑顔で元気に通学している姿を見て良かったなぁと思ったりしました。
 また、苦しい思いをさせた側の人も、新しい生活の中で視野が広がって、自分の行動を客観的に見ることができるようになったりして、過去の自分を反省することもできるようになり、いじめとは無縁の高校生活を送るうちにそんな自分に気がつくことでさらに大人へと成長していくこともありました。
 ところが、新聞やテレビを見ていると、今では高校でもいじめの問題があり、それは大人の世界でもあるのだという状況になっているんですね。その原因は何か、専門家の人たちが色々調べたり考えたりしているようですが、きっと様々な要因が絡んでいると思うので簡単な解決策は見つかりにくいのだと思います。
 僕が思っている原因のひとつに「ディスカウント」があります。中学校を卒業してからの進路をどのように選択するのかを考えていく過程で、自分の成績をもとに「この高校はムリだけど、ここなら…」というように考えた瞬間、もしかしたら自分で自分をディスカウントしているかもしれないと思うのです。「○○高校にいけない自分」を認めることで自分の人間としての価値を低く見てしまうと、それはディスカウントですよね。それが後々まで影響して人間関係がうまくいかないのではないかと思うのです。

先生のつらいとき、うれしいとき

 もしも、中学校の先生が生徒の成績だけで機械的に高校を振り分けたら、それは教師による生徒のディスカウントになってしまうかもしれません。それはできるだけ避けたいです。君たちの希望を、考えを少しでも実現できるようにしたいです。だから、教育相談ではどんな進路に進みたいかを、まず聞きたいです。そして、その希望にあわせたアドバイスを心がけたいです。だから、自分の成績のことだけを考えて希望する高校はここですと言ってくる人がいると、ディスカウントのことなんかが頭をよぎり、僕は少し考えてしまいます。今の世の中それではだめだよとか、先生は甘いとか言われるかもしれないけど、やっぱり少しでも良い方向に進めたいと思います。今の状況の中でできる限りのことをしたいです。
 だからといって、成績をまったく無視するわけにはいかないから、とても難しいです。経済的なことも考えなければならないし、他にもいろんなことが関係してきます。ひとりひとり考え方も条件もちがってくるので、仕方がないことだと単純に割り切れないこともあります。それだけに、合格したときの喜びの声を聞いたときや、高校生になってしばらくしてから中学校に遊びに来て、高校生活が楽しいですなんて笑顔を見ることができたときはとてもうれしいのです。

夢を持ちましょう

 今、君たちに望むこと。それは高校に対しての見方を広げてほしいということです。高校選びの基準はいろいろあって当たり前だと思うのです。人にとってどんな学校かではなく、自分にとってどうなのかを考えていくようにしてほしいのです。もしかしたら、希望する高校を変更しなければならないかもしれません。でも、新たに選んだ高校にも必ず良いところはあります。そういったところにも目を向け、これからの新しい生活にきちんと向き合いましょう。これからどんな人と出あうのか、どんな体験をするのか、そういったことにワクワクした気持ちを持ってください。
 それからもうひとつ、夢を持って欲しいです。「夢」とは自分がしたいことです。「夢」があれば、自分をディスカウントすることにはつながりにくいです。もしも、「夢」を実現することができたら、また、たとえ夢を実現できなかったとしてもそれに向けてがんばることができたら、自分で自分に向けて出す強力なプラスのストロークになります。
 でも、まだ自分の「夢」が見つからない人も多いと思います。そんな人は自分の夢を見つけるために、それをつかまえるために高校に行くんだと考えるのはどうでしょうか。自分は何をしたいのか、何ができるのか、考えていくことを大事にするんです。
 『人は 自分が何をするために生まれてきたのかを 考えるために生まれてくる。』これは宮沢賢治のことばです。僕の好きなことばです。