「チームワーク」の視点から

野球型のチームワーク

 「集団」がスムーズに効率よく機能するためにはチームワークがとても大切ですがそのチームワークには2種類あります。
 ひとつは野球型です。監督はどんな試合運びをするのかを考えて指示をします。選手は指示に従い、プレーをします。相手のピッチャーが一球投げるたびに、バッターが監督からの指示を確認しているシーンはテレビ中継を見ているとよく目にします。この場合、選手が自分で判断してプレーして良い結果が出たとしても監督の指示に反していたら、あとで問題になることがあります。ホームランを打ったけど監督の指示は送りバントだったのですごく怒られた、という話も聞いたことがあります。
 元巨人軍のコーチで、野球殿堂入りもした故牧野茂氏の言葉から。「野球の場合、試合をやっているのは監督である。いわば、将棋を指すのは監督であって、動いている選手は駒である。まずこれを徹底しなければならない。選手は監督のサインに従って、その場その場で最大限に実力を発揮すればよい。」

フットボール型のチームワーク

 もうひとつのチームワークは、フットボール型です。サッカーやラグビーの場合、監督は野球のように試合中にいちいち細かい具体的な指示を出しません。それどころかラグビーでは、監督はスタンドで観客と一緒に試合を見ています。試合中に指示を出すことはないので、試合に出ている選手は自分で考えて作戦を立ててプレーしなければなりません。
 第8代日本サッカー協会会長を務めた故長沼健氏の言葉から。「選手はそれぞれマークすべき相手を持っている。これは自分の義務だ。しかし、自分の義務しか意識しない奴が圧倒的に多い。スポーツをやっていて一番危険なタイプは、命令されれば何でもやります、という奴だ。我々が選手を育ててゆくのに、一番大切なことは、自分で考える能力だ。自分で考え、まず状況をつかむ。つかんだ上で、次に何が起こりそうだ、という感じである。そういう状況が起こったら、自分はどこにいたらいいか、今、自分がいかなければならない所はどこか、瞬時に判断して、自分で行動を起こせ。ゴールに関係しない時でも、仕事は必ずある。とにかく、自分のアイデアで走る男でないとだめだ。」

チームワークの視点から2組の文化祭を振り返ると

 野球型とフットボール型。このふたつのチームワークは全然違うんですね。ただ、どちらが良いのかなどは一概には言えません。どんな『目的』に向けてチームワークを発揮しなければならないのか。それにあわせて最適な方を選ぶべきだということだと思います。阪神タイガースが、来年フットボール型のチームワークを導入して監督の指示を無視して選手が自由に行動したら、攻撃でも守備でもめちゃくちゃになって、おそらく最下位が確定するのではないでしょうか。
 中学校のクラスにはどちらがふさわしいのかは、やはり難しい面があります。初めは目的や状況、メンバーの能力などに応じて担任や学級代表だとかリーダーと言える人が、細かく指示を出す野球型チームワークが多くなるのも仕方がないかなと思います。しかし、集団として成熟していくにつれて、クラスのメンバー一人一人が自分で考えて行動するフットボール型チームワークが少しずつ増えていくのが理想なのではないかと思っています。そして、僕は自分が担任するクラスが、そんな集団になって欲しいなと思います。
 さて、この「チームワーク」の視点から2組の文化祭を振り返ってみると、どうでしょうか。クラス全体としてのチームワークが、なかなかうまく機能しなかったところがありましたね。クラスの全体的な視点を持つことができなかった。何を優先して大切にするべきなのかを正確に判断できなかった。自分に何ができるのか、やるべきことは何かを考えられなかった。やる気を出して自ら行動することができなかった。こういった反省に思い当たる人は多いと思います。
 ただ、僕の過去の経験からすると、成功した時よりも失敗したときの方がいっぱい学べるんですよね。今回、みんなは良い経験をしたのだと思います。2組は考える力を持っている人が多いし(でなければ、当日考えたミニ劇をやってのけることは難しいですから)うまく上昇気流に乗れば、すごいパワーを出すことができる場面も今までに見せてくれています。卒業式まであと5か月ほどですが、きっとこの経験を生かしてくれるものと信じています。