「生徒会」を育てる方法

生徒会役員選挙

 ◇◇中学校の生徒会役員選挙がスタートしたのは、文化祭の取り組み真っ最中の9月でした。まず選挙管理委員会が発足して立候補の受け付けが始まると、今年の2年生はすごかったですよね。14人の定員に対して全部で28人もの人たちが生徒会役員に名乗りをあげました。そのうち5組からは立候補者が11人も出ました。他にこんなに立候補したクラスはありません。
 去年、担任だった1年2組で「この中から5人~7人の人が立候補すると思うよ」と予想し、実際に6人が立候補とみごと的中させた僕ですが、5組のこの立候補者数は予想できませんでした。まだまだ僕は5組を理解していないってことでしょうか? それとも、5組には潜在的なパワーがあるのでしょうか? よくわかりません。
 とにかく、図書室前の立候補者一覧を見た校長先生が「M先生の指導の成果ですか?」と聞かれるようなこともあったぐらい、すごい人数が立候補したんです。

選挙の結果

 中間テストが終了するとすぐに選挙運動があって、昨日、立会演説会と投票が行われました。5組では、3人の信任投票は全員信任、8人の決選投票のうち4人当選となりました。
 先週だったか、『14人の定員に28人が立候補したんだから、半分が落ちることになる』と言いました。でも、昨日の夜、選挙の結果を見ていて、信任投票は普通全員信任されるから、残り11人の定員を25人で争っていたんだということに気がつきました。倍率は2.27倍だったわけです。決選投票はそんな状態だったんですから、8人中4人の当選という結果は、いわば順当な結果だったと言えるのかもしれません。そんなことで落選した4人が慰められるとは思っていませんが、もう少し聞いてください。

選挙の影響

 昨日の立会演説会で、僕はすごいなと感じたことがありました。立会演説会の司会者進行マニュアルには、「まず会場を静かにさせてから始めること」という注意書きがあったんですが、生徒全員が入場してそろそろ始まるぞという頃になると、自然に静かになったでしょう? 司会者は注意することなく、そのまま立会演説会を始めてしまいました。本当にすごいです。
 これは、28人もの立候補者が出たことによる影響ではないかと思っています。しっかり聞いて選ばなくちゃいけないというような雰囲気につながったのではないかということです。生徒自身が生徒会に関心を持つことはとても大切ですが、そのようにすることは結構難しいことなのです。それをできたことは、やっぱりすごいことなんです。

「生徒会」の育て方

 「生徒会」というのは自治組織です。学校という組織の中で、独立しているという意味です。先生ではなく、公正な選挙で生徒の中から自分たちで選んだ人が代表になります。先生には立候補を強制的にやめさせるような権限はないし、選挙権すら持っていません。さらに独自の予算を持っていることなどがその証拠です。まだまだ成長途上にある中学生の組織ですから、先生の手助けが必要なのはあたりまえですが、自治組織であることは確かです。
 自治組織がきちんと機能していくためには、その組織に属している人間が活動内容などをきちんとチェックし、必要であれば意見を伝えたり質問をしたりすることが必要です。今回の学級通信で言いたいことはこの点なんです。生徒会役員になれなくても、生徒会のためにやれることはあるということです。
 昔、担任した生徒で、副会長に立候補したけど、1年生の立候補者に敗れてしまった女の子がいました。普通、すごく落ち込むと思うんですが、その学校にはクラブの部長の中から選ぶ「総部長」という役職がありまして、なんとその子は自分がクラブの部長だったので、総部長として生徒会役員の一員になってしまったんです。そして、1年生の副会長とともに時には意見を戦わせ、時には協調して生徒会の仕事をやり遂げました。
 これは、極端な例かもしれませんが、他にも生徒会のためにできることはいくらでもあります。学級代表になって、代表者会で生徒会本部の活動に目を光らせ、必要であれば意見を言う。気がついたこと、やって欲しいことなどがあれば、クラスの中に7人も生徒会役員がいるんですから、その中の誰かに伝えることも考えられます。班長になったり、部活を頑張ったり、ろうかや教室に落ちているゴミを拾ったりすることも、みんな生徒会を育てることにつながると思います。
 5組は文化祭の劇を作っていく中で、一部の人だけがしんどい思いをするだけでは良いものを作ることはできないと学んだでしょう? そのことをもう少し大きなスケールにすればいいだけだと、僕は思っています。