成長してきた歴史
赤ちゃんの成長速度
ぼくが以前いた学校ではクラス数と教科担当の先生の人数の関係などで、ぼくが家庭科を教えたことがあります。調理実習も、ミシンでエプロンを縫うような授業もやりました。そして、「保育」という分野の授業もやりました。
「保育」の分野は子どもが誕生してからどのように成長していくのか。そして、子どものよりよい成長のために周囲の大人はどのように関わっていくべきなのかといったことを学習するものです。ぼく自身も自分の子どもを育てている最中でしたから、その実体験も織り交ぜながら授業を進めていきました。逆に授業で教えたことを自分の子育てに活かしたりもしましたし、可能であれば健診などに自分の子どもを連れて行くというような形で父親の子育て参加を実践しました。そしてそこで学んだことをまた授業に活かすという、自分の専門外の教科の授業でしたが結構充実していたように感じていました。
学習していくと、結構面白いことがいろいろわかります。例えば、君たちは「今が育ち盛りだから」などと言われたことがありませんか? でも、実際には人が本当に大きく成長するのは生まれてからの1年間です。たった1年で体重は約3倍、身長は約1.5倍になります。これがどのくらいすごいことかと言うと、今、体重が35㎏、身長が140㎝の人がいたとします。それが1年後に体重は100㎏、身長も2mを超えるということです。中学生になって、いくら育ち盛りだって言われてもこんな成長は無理です。赤ちゃんの成長速度ってすごいでしょう?
身体の成長だけではありません。身体の成長に伴って、寝返り ⇒ ハイハイ ⇒ つかまり立ち ⇒ ひとりで歩けるようになる というように運動能力もすごく成長するし、脳の発達に伴って記憶や言語能力、情緒なども発達します。視覚や聴力などの感覚器官は、身体と脳がバランスをとりながら発達し、さらに経験を重ねながら獲得していくものだったりします。
成長してきた歴史
このように赤ちゃんの成長のスピードはすごいです。でも、もちろん、赤ちゃんの力だけで成長していくことはできません。周囲の大人の、特に親の努力が欠かせません。
生まれて何ヵ月かの間は、昼と夜の区別がありません。お腹がすいたら夜中や早朝であろうとお構いなしに泣きます。しかも、胃が小さいので一度に飲めるミルクの量が少ないからすぐにお腹が減るので、泣く間隔は3~4時間おきです。夜中の12時ごろにミルクを飲ませても、明け方までにまた泣いて起こされます。これが寒い冬だったりすると結構つらいものです。
さらに、一日の半分以上眠っているはずなのにミルクを飲んでいる途中で眠ってしまうこともあります。「ちょっとしか飲まへんかったら、次に起きる時間が早くなる。起きて全部飲んでくれ」などと思いながら、頬をそっとつついて飲むように促したりします。なんとか飲み干しても、ゲップをさせないとミルクを吐いてしまうことがあるので、ゲップがでるまでは親は眠れません。大変です。
子育ての歴史は生まれてからだけじゃありません。生まれる前からさまざまな親の努力が始まっています。君たちの中にも、さまざまなことがぎっしりと詰まった『成長してきた歴史』があるのです。中学生ぐらいになって、自分ひとりで大きく成長してきたような顔をして親を困らせるような人がいますが、それは絶対に間違っています。親への感謝の気持ちが最近薄れてきたかなぁと思う人は、自分が赤ちゃんだった頃の話を聞いてみてはいかがでしょうか?
親の気持ち
そんな思いをしながら育ててきた自分の子どもが、学校でいじめられていたと知ったら、親はいったいどんな気持ちになるでしょうか。自分の子どもが、学校で誰かをいじめていたと知ったら、親はいったいどんな気持ちになるでしょうか。
そのことをきちんと想像することができたら、その人は誰かをいじめることはなくなると思います。そして、いじめをする人がひとりもいなくなれば、いじめられる人はひとりもいなくなるとぼくは思っています。みんなは、どう思いますか?