文化祭 劇の脚本・演出講習会 資料 その1

1.演劇とは

①総合芸術です
演劇とは演じる役者だけで作るものではありません。役者、脚本、音響、照明、衣装、道具などさまざまな要素が複雑に絡み合って完成されるものです。ですから、演劇のことを『総合芸術』と呼ぶ人もいます。
ただし、中学校の文化祭でやる演劇なら、最も大きく影響するのは脚本です。最初にきちんとした脚本ができていれば、役者が演技しやすくなるし、音響や照明などの効果も活かしやすくなり、結果としてすばらしい演劇が完成する可能性が高くなります。
ぜひ、すばらしい脚本を用意してください。

②演出も考えよう
映画を撮るときには映画監督がいます。映画監督は脚本を元に、ひとつひとつの場面をどのように表現するのかを考え、決めていきます。演劇の場合には監督ではなく演出家が監督と同じような役割を担当します。
本来なら脚本家と演出家は別々なのですが、中学校の文化祭でやる演劇の場合、演出家を担当できる人がいない方が多いです。そこで、脚本を作成する段階でその場面をどのように表現していくのか考えて、脚本の中に書き込んでおきましょう。つまり、脚本係が演出家を兼ねるのです。これから脚本のことだけではなく、音響や照明の基本テクニックも説明するのはそのためです。

③心の変化を表現しよう
演劇では、登場人物の心(気持ち)の変化を表現する部分が必ずあります。だから、演劇の中では必ず事件やイベントが発生するようなストーリー展開になっています。そのときに登場人物が何を考え、どう行動していくのか。そして、他の登場人物と触れ合う中でどのように主人公の心が変化していくのか。この部分をうまく表現することが大切です。
その心の変化が観客に伝わって、観客がその心の変化を理解し納得したときに感動が生まれます。しっかりと心の変化を表現しましょう。そのための音響であり、照明であり、演技なんだと言うことをクラスでしっかりと伝えてください。

2.脚本を書く前に知ってほしいこと

場面転換について

①場面転換の回数はできるだけ少なく
テレビや映画はあとで編集ができるし、一瞬で場面を切り替えられるので、場面転換の回数に制限はありません。しかし、演劇の場合は編集ができないし、切り替えに時間が必要なので、30分ほどの劇なら大きな場面転換は1~2回ぐらいが望ましいです。小さな場面転換もできるだけ少なくし、さらに場面転換を短時間に済ませるようにできれば、見ている側にとって見やすい劇になります。

②場面転換の方法にはどんなものがあるか
・暗転
照明を全て消してその間に場面転換を行う方法。大きな場面転換の時に適しているのですが、時間がかかると見ている人が飽きてしまうので、できるだけ短時間ですませる工夫が必要です。さらに、その際に大きな音が聞こえてしまうと雰囲気を壊してしまいます。誰が何をどこへ動かすのかといったことを決めて、体育館の練習の時に確認し、時間短縮を図りながら静かに場面転換できるようにするといいでしょう。

・幕を使う
幕を閉めて、その前で演技を続けている間に場面転換を行う方法。劇の流れが中断しないので、見ている人にとって内容がわかりやすくなります。ただし、幕を閉めると観客は劇が終わったと勘違いすることがあるので、タイミングや幕を閉める直前のセリフなどに工夫が必要です。これも音を出さないように場面転換をしないと、幕の前でやっている演技のじゃまになります。
学校によっては、中幕 と呼ばれるものがあって中幕の前で演技を継続している間にホリゾントを交換できたりします。以前杜子春という作品に取り組んだクラスが、主人公の杜子春が幻の怪物に苦しめられる場面で、怪物が中幕の下をくぐって姿を消すことで幻が消えた表現をしていました。

・スポットライトを使う
舞台の端や手前等にスポットライトの光のみをあてて他は暗くし、そこでナレーターが話をしたり少人数で演技をしたりして、その間に場面転換を行う方法。舞台の一部の大道具を変える時などに有効です。

・道具で工夫し、演技でカバーする
あるプロの劇団が使っていた方法です。舞台に置いてあるいくつかの箱を組み合わせたり移動させたりして、場面にあわせて机、イス、ベッド、キッチンの流し、タンスなどに見立てて利用するもの。
ただの箱なのに演技でカバーすることで、それらしく見えるようにしていました。場面転換が多い劇だったのですが、1回の場面転換が5秒以内だったので、流れが中断せず見ていてわかりやすかったです。この方法は場面転換の一部で利用できるかもしれません。

③かならず音響との連携を = ブリッジ
暗転の時などに、音響係が次の場面の雰囲気にあった曲などを流しておくと雰囲気が途切れません。この音響のテクニックを「ブリッジ」といいますが、観客からすると全体の流れがスムーズだし、場面転換の時の音をある程度消す効果もあります。必ず使って欲しいテクニックです。


舞台上の配置等について

①登場と退場の方向を書き込みましょう。
舞台のどちらから登場し、どちらへ退場するかをきちんと脚本に記入しておくと、役者が演技を練習する時に混乱しにくくなるし、照明、音響、道具などを担当する人たちのイメージが統一されて、準備がスムーズにできます。
例えば舞台の右へ向かって退場したのに、次の場面になってまた右から登場するとなんとなくおかしいなと感じる時があります。登場や退場の方向はストーリーの流れを考えて決めておく必要があるということです。そのために脚本を作るときには舞台の図を用意して、役者が舞台上をどのように移動するかを書き込みながら考えるといいでしょう。
役者が右へ退場したあと、次の場面で左から登場しなければならないといった場合、その役者が移動できる時間や方法の確保が必要です。幕を閉めているならその間に移動する。暗転があればその間に移動する。舞台の下を移動する。といった方法を考えておきましょう。(舞台裏を使うとドアを開けたときに光がもれます)
舞台の左右だけでなく、観客席の間を通って登場する、左右にある2階のベランダのような部分を活用することも考える必要があるかもしれません。

②どこで演技をするか
舞台上のどのあたりで演技するかも脚本に書き込んでおくと、役者が自分の動きをイメージしやすくなります。また、なるべく舞台を広く使い、同じ所だけで演技しないようにすると観客の興味が長続きしやすいです。

③道具と演技の位置
大きな道具を使う場合、役者との位置関係に気をつけないと、大きな道具に隠されてしまい観客から見えない役者がでてしまう可能性があるので注意します。また、役者が寝ころんで演技する場合も、見にくくなる可能性があるので、大道具で台になるようなものを用意するなど工夫を考えましょう。


登場人物について

①役割と性格を決める
オリジナルの脚本を作る場合、または、もともとある脚本に少し手を加える場合は、この場面でこんな役割が欲しいということを考えると登場人数が決まります。
また、主役、悪役、脇役、ボケ役、説明役など話を進行させる上での役割と性格を決めると自然にセリフが決まってきます。
ある役者の役割(性格)を観客にもはっきりと意識して欲しい時は、例えば「あいつはいつも○○だから」というように登場人物の誰かのセリフの中で説明する方法があります。

②ナレーター
ナレーターが何度も登場してきて、一言しゃべっただけで退場するというのは避けましょう。
状況の説明が必要な時でも、ナレーターが出てくるのではなく役者のセリフでカバーできることが多いです。
例えば夜の場面になったことを観客に伝えたければ、役者に「すっかり暗くなったなぁ」というようなセリフを言わせれば、観客は夜になったのだということがわかります。同時に照明を青に切り替えて、音響で虫やカエルの声を流す、というように連携することができれば完璧です。

③動作、表情、気持ち
例えば「おい」のひと言でも誰かに対する呼びかけの声なのか、怒りや脅迫の気持ちがこもっているのか、恐怖や緊張のあまり思わず出た声なのかによってずいぶんと雰囲気が変わってしまいます。ですから、どんな表情や気持ちでセリフを言い、あわせてどんな動きを行うのかといった情報もできるだけ脚本に書き込んでおきましょう。そうすれば役者は演技を考えやすくなります。
また、練習をしているうちにセリフが変わるということはよくあります。脚本を印刷する時にはあとから書き込めるようなスペースをある程度用意しておきましょう。