懇談でのグラフ活用例
もう20年ぐらい前になるでしょうか。勉強や成績面について正しく判断ができずに、自分はダメな人間なんだと自信を失う、やる気がでない、あきらめる。そんな生徒たちが多くいることが問題になっていました。例えばテスト勉強を頑張ったのに点数が伸びなかったと落ち込んでいた生徒がいたのですが、実際には学年平均点が大きく下がっていたので、勉強を頑張った成果は表れていたというようなケースです。
保護者・生徒との三者懇談で、生徒を褒めて自信を持たせたい。生徒自身が納得できる具体的な数値を示してやる気を出させたい。わかりやすい目標を示してあきらめないで勉強に取り組むようにしたい。正しく分析・評価をする視点や考え方を教えたい。そんな要望が学年の中で出てきました。
そこで試しに生徒本人のテストの点数から平均点を引いた数字を用いたグラフを作ってみました。学年平均点を基準にどれだけ上回ったか下回ったかの数字を使えば、それなりにわかりやすいものができるのではないかと考えたのです。結果は、クラス全員に効果があるとは言い切れませんが、使ってみたら生徒にも保護者にも好評で、良い効果につながった例がいくつもありました。
その当時とは違い、学年平均点の扱いも変わってきている部分もあるし、地域によっても違いがあると思いますので、例えば懇談が初めてで話をするネタを見つけるために作っておくけど、生徒や保護者には見せない。学年主任の先生に確認する など慎重な取り扱いを考えてください。
下に学年会議で参考にできるように想定して作った4つの事例を掲載しました。説明の仕方などの参考にしてください。
なお下のグラフは1年間分すべて掲載しています。大阪では公立高校の一般入試の懇談で使うものです。そうすると、1学期の懇談の時には中間と期末、二つのデータしかありません。ですから「夏休みに向けて、しっかりがんばろうね。このグラフが右肩上がりになるといいね」という感じで懇談を終える形になります。


(事例1)
3年生になって勉強を頑張っていることは、下のグラフを見て1学期よりも2学期の定期テストの点が上がっていることからわかります。しかし、実力テストの点は低いです。これは、1,2年生の学習内容が身についていないからかもしれません。残された時間で1,2年生の復習をどうやっていくか、よく考えて計画的に取り組んでください。
それから、上のグラフを見ると点数のばらつきが大きいです。勉強のやり方がきちんと身についていると、点数のばらつきは小さくなるものです。勉強は時間をかければ良いというものでもありません。短時間でもしっかり集中して勉強すれば、効果があります。何度も時計を見て時間を気にしながら勉強するとか、テレビを見ながらの勉強をしていては、あまり効果はあがりません。
勉強のやり方がきちんと出来ている人は、「何時まで勉強しよう」と考えるのではなく「この部分をやろう」と考えます。時間を基準に考えるのか、勉強の内容を基準に考えるのかで結果は大きく変わってくるのです。自分の今までの勉強のやり方やテスト前の計画などを点検して、必要なら考え方とか方法を工夫して下さい。


(事例2)
社会、理科が苦手なことが上のグラフに現れています。苦手な教科だからとあきらめていませんか? それではなかなか改善できません。
Wの形になっている典型的なパターンなので、私立高校を受験する場合には、3教科入試の高校が有利です。しかし、3教科入試の高校はそう多くありません。5教科入試の高校を選んで、得意な国語、数学、英語をさらに伸ばして苦手な2教科を補うという考え方もあります。一番困るのは苦手な教科ばかり勉強して、その結果得意な教科の成績まで下がってしまうこと。理想は得意な教科を下げずに苦手な教科をあげていくこと。そうするためにはこれからどうすればいいのか、よく考えて、しかも実際に努力していくことが必要です。
そこで参考になるのは下のグラフ。変動が大きいです。テスト前の勉強に取り組む態度がその時々によって変わっているなら、勉強を頑張る覚悟が足りないと言えます。また、毎日の授業の受け方はどうですか? ノートはきちんと工夫しながら書いていますか? 授業を大切にできないようでは、成績は伸びません。場合によっては他の人にノートのとり方や勉強のやり方などを聞いてみるのもいいと思います。


(事例3)
下のグラフを見ると、3年生になったばかりの頃は頑張ろうって気持ちだったけど期末テストの時にはその気持ちも薄れて、夏休みもう一度頑張って、実力テストが思っていたよりも良かったから、2学期の中間テストでまた油断して、という感じに見えるけどどうですか? 高校に行こうと考えるってことは、それはもっと勉強をするってことです。それなのにテストのたびにやる気を出したり出せなかったりしていてどうする? いつも勉強を頑張るんだっていう気持ちをしっかり持ってください。上のグラフを見ると、まず英語が低いところに集中しています。面倒でも最初から復習をやり直すしかありません。今なら1年生の問題が簡単にわかるかもしれません。そこで自信がつけば、苦手意識も消えてぐんぐん伸びることもあります。しっかり取り組んでください。
それから国語,社会,数学は点数のばらつきが大きいです。授業態度やノートの取り方、毎日の予習,復習、テスト前の勉強計画と勉強の取り組み方など、今までのやり方をそのままやっていたのでは同じ事の繰り返しになります。自分にあった勉強方法は、実際にいろいろ試して見ないとわかりません。とにかくやってみることが大切です。


(事例4)
上のグラフで、一番結果のばらつきが大きいのは数学です。こういう場合、テストファイルを見てどんな分野で点数が低かったのかを確認できたら、そこが弱点だとわかりやすいです。テストをファイルにまとめておく理由は、こういうときに役立てるためなので、ぜひ活用してください。自分の弱点がわかったら、そこを集中的に勉強して、今のうちに解決しておくこと。
国語の点数が他の教科に比べて高めですね。国語力はすべての教科につながるものです。その国語が高いのだから、他の教科ももっとできてもおかしくないです。勉強のやり方を工夫してみるとか、ちょっとした工夫で良くなる可能性があるんです。挑戦してみる価値は充分にあると思います。
下のグラフをみると、2学期の中間テストの結果が高くなっています。逆に1回目の実力テストが低いです。2学期最初のテストが実力テストで、その結果が良くなかったから中間テストで頑張ったのでは? これもやれば出来るという証明になりませんか? やれば出来るということは、やらなければ下がるということです。ぜひ、勉強にしっかり取り組んでほしいです。
その他
(1学期の懇談では)
1学期の懇談の場合、グラフを見せる前に「中間テストと期末テスト、点数の結果は置いといて、純粋にテスト勉強を頑張ったのはどっち?」と聞きます。9割ぐらいの確率で、生徒が頑張ったと言った方と下のグラフの結果が一致します。(5教科合計のグラフを見ると、事例1事例2事例3はどれも中間より期末が下がって右下がりになっているので、どの生徒も中間テストの方が頑張ったと言うと思います)
グラフを見せながらそのことを指摘すると、生徒は頑張れば結果につながるのだとわかり、笑顔になるし、やる気も出てきます。
横で座って聞いていた保護者も納得するし、結果が良かった方に目が行くので安心したような表情で帰っていきます。
(グラフの紙の扱い)
懇談の終わりに、グラフの紙はお持ち帰りになりますか? と聞くと、ほとんどお持ち帰りになります。帰ったら家族に見せますという家庭もありますが、中には家のトイレや冷蔵庫の前に貼り出す家庭もあります。2学期になって、生徒と担任の進路相談のたびに新しいデータを追加したグラフの紙を作りますが、その紙も持って帰ることが多いです。きっと、貼り出していた紙と交換するのでしょう。
(働き方との関連)
20年前と比べると、今はますます忙しい状況になっていると思います。そんな中で、こんなグラフを作って毎回配るのは働き方改革という視点から言えば、逆行してると思います。また、もろに個人情報の塊ですから、タブレットで活用するのはハードルが高いでしょう。じゃぁ、なんでブログに載せたんだって言われそうですが、学校の状況によっては若い先生へのフォローがなかなかできないことがあります。そんな状況の先生に少しでもお役に立てればという思いです。