遺伝子スイッチON!

人とチンパンジーの違い

 人とチンパンジーの 遺伝子(DNA)の差はほんの少しだけだという話を聞いたことはありませんか? 僕は聞いたことがあって、具体的にどれくらいの差があるのかちょっと気になったので調べてみました。すると、人とチンパンジーのすべての遺伝情報を比べた時にその違いは3.9%しかないことがわかりました。
 そのたった3.9%の中に人とチンパンジーを分ける要素があるんだろうなぁと僕は思っていました。ところが、チンパンジーにはないけど人にはあるという遺伝子はひとつもないと書いてあって、ちょっと驚きました。人という生き物を決める特別な遺伝子はないのに、じゃあ、人とチンパンジーを分けるものはなんなんだ?ってことになりますよね。

遺伝子のスイッチ

 そこで、さらに調べると遺伝子の中にスイッチがあって、どのスイッチをオン・オフするのか、また、どのタイミングでオン・オフするのかを決定する遺伝子が存在することがわかりました。その遺伝子は、以前までは使われることのない部分だと思われていたのに、本当はとっても大切な部分だったということです。
 こうなると、遺伝子スイッチはとっても重要です。人とチンパンジーの差は、どうやらこのスイッチのオンとオフのタイミングや場所の違いで生み出された可能性があるのです。
 さらに、環境による影響が、遺伝子の働きを変えることが明らかになっています。その環境には、気候変動、食物や化学物質といったものも含まれていますが、精神的な要因も見過ごすことはできません。笑いの刺激が、糖尿病患者の食後の血糖値の上昇を抑え、その際、オンまたはオフになる遺伝子が発見されています。

成長できる可能性

 心にもエネルギーのようなものがあり、「思いの強さ」や「気持ちの持ちかた」によって遺伝子のオン・オフが変わるということは、心のはたらきを意識的に変えてやることで、人はより良い方向に成長できる可能性があるということです。これは、ちょっとうれしくないですか? だって、自分の遺伝子を自分で変えることはできませんが、心はある程度自分の力で変えられるからです。
 このあたりのことを筑波大学名誉教授・村上和雄氏はこう書いています。
『チャールズ・ダーウィンが『種の起源』を発表したのは、今からちょうど150年前のことだ。彼は「すべての生物は共通の祖先に由来し、自然淘汰(とうた)により進化した」ことを、自らの足で探索し、観察した膨大な事実をもとに発表した。
 そして今、ダーウィンの進化論を超える新しい進化論が生まれようとしている。私は、笑い、感動、感謝、生き生きワクワクした気持ち、さらには、敬虔(けいけん)な祈りまでもが、良い遺伝子をオンにすると考えている。これからの私たちは、意識して、よい遺伝子のスイッチをオンにすることで新しい人間性を生み出すことができる可能性がある。』

よい遺伝子スイッチをON!

 以前、吉本新喜劇を見る前と見た後の観客の血液を分析すると免疫力がUPしていて、これは「笑い」が影響したようだという報告を新聞で読んだことがあります。もしかしたら、遺伝子スイッチの話とどこかでつながっているのかもしれません。
 村上和雄氏の言うよい遺伝子をスイッチONにする「笑い、感動、感謝、生き生きワクワクした気持ち、さらには、敬虔(けいけん)な祈り」などは、宿泊学習にしっかり取り組むことと深くつながるなぁと僕は思いました。
 みんなで仲良く遊んで笑いあい、頑張ってくれた係の人たちに感謝し、ワクワクしながらプログラムに取り組み、自分のクラスや班が優勝できるように祈り、終わったあとで感動できる。宿泊学習ではそんなチャンスがいっぱいあります。宿泊学習が成功したら、それはよい遺伝子スイッチをめちゃくちゃたくさんON! にしたってことです。来週の宿泊学習に取り組んでいく「やる気」みたいなものがすごく出てきました。そして、たぶん、このことがもうよい遺伝子スイッチをONにしているのだと思います。