最高気温から学ぶこと

最高気温20℃

 つい3週間ぐらい前まで寒いと思っていたけど、ずいぶんと暖かい日が多くなりました。最高気温が20℃を超えるという天気予報を見て、『暖かくなったなぁ』とか『春だなぁ』と感じた人もたくさんいたと思います。
 でもこれが半年前の10月ごろだったら、最高気温20℃と聞くと『寒くなってきたなぁ』とか『秋だなぁ』と感じたのではないでしょうか。同じ気温なのに、同じ人がまったく正反対の感じ方をするのです。考えてみれば少し不思議なことだと思いませんか?

何を基準にするか

 これは、身体が暑さまたは寒さに順応することも多少影響していますが、春と秋では比べる基準が違ってくることが原因で起きることだと思います。
 人は何かを判断するとき、無意識のうちに何かを基準にして比べて的確に判断しようとすることがあります。過去に自分が経験したことと比べてみたり、自分が知っていることの中から似ているものと比べてみたりするのです。ですから、同じ最高気温20℃でも、その前の季節が冬で寒い日が続いたあとなら、その寒さを基準にして『暖かくなったなぁ』と感じます。逆にその前の季節が夏で暑い日が続いたあとなら、その暑さを基準にして『寒くなったなぁ』と感じるのです。
 同じようなことは、他にもあります。何年か前、クラス写真の撮影の時に背の高い人の隣だと身長の差が目立つ写真になってしまうと言った人がいました。その人は、背の高い人を基準にして考えたから、自分の背の低さが目立つと考えたのだと思います。でも、逆に背の低い人を基準に考えると、隣の人の背の高さが目立つことになります。背が低い人と背が高い人がいて、お互いに相手との身長差で悩んでいたりする。なかなかむずかしい問題です。
 何を基準にするかで、判断の結果は正反対になってしまうことがあるわけですから、人間はできるだけ正確な判断ができるように、「基準」を常に最新のものに更新したり、比べ方を工夫したりしなければなければなりません。そのためのひとつの方法が勉強することなんです。できるだけ正確な判断ができるようにしっかりと勉強に取り組んでもらいたいと思います。

友達の基準

 新しく同じクラスになった人たちの中には、以前から知っている友だちもいれば、初めて話をするような人もいると思います。これからそんな人たちと会話をしたり一緒に何かをしたりしていくうちに、相手がどんな人かを「判断」し、以後のつき合い方を決定することになっていくと思います。
 その「判断」をするときには、何らかの「基準」があるはずです。おそらく、その「基準」は今までの「経験」によって作られています。でも、「基準」のもとになる今までに出会った人数は何人ぐらいでしょうか。また、今の「基準」は完璧でしょうか。
 これも以前の話ですが、1年生を担任していたときの11月、クラスのある人が体育の先生に『担任の先生はどうなん』と聞かれて『最近、やっと慣れたんですよ。だって、小学校にはあんな先生いないんですよ。』というようなことを答えたそうです。人間の個性っていろいろあるから、こんなことが起きるんでしょう。
 ということは、初めて同じクラスになった人がどんな人かを判断する基準は完璧ではないし、今後まだまだ基準に影響を与える人が出てくるはずだということになります。そうですよね?
 でも、基準をまったく変えようとしない人って時々いるんですよね。そんな人は古い基準のままで初めて会った人を判断するから、個性をしっかり出している人なんかは受け入れられません。そして、受け入れることができない自分のことは棚に上げて「あいつはキモイ」なんて一言で相手を否定したり、「ムカツク」からといって攻撃したりすることもあります。また、人との出会いやふれあいを拒否する人もいます。自分と仲のいい人との関係だけが大切で、そうでない人とは班の中での話し合いや係の仕事ですら協力しないような人たちです。今日の班の話し合いの時にもそういう人は何人かいましたね?
 心理学の中にいろんな人を受け入れて、判断する基準を進化させていくことが成長していくことだという考え方があります。つまり、初めて出会った人とふれあうことで、相手がどんな人かを判断する基準を新しくしていくことができたら、それが大人になることだと言えるのです。
 新しいクラスがスタートし、席替えをしたこれからが新しい人とのふれあいを深めて、「基準」を新しくするためのチャンスです。少し意識しておいてください。